そもそもコードが書けるエンジニアがAIを使うときは、頭に入っている完成図をもとに、要件の整理から構造設計まで適切に指示を出し、回答を自分の知識でチェックできる。
つまり、AIを「優秀な部下」のように使い、最終的な判断(目利き)はきっちり自分が下すわけだ。この「目利き」ができるかどうかが、AIを強力な武器として使いこなせる人と、単にツールに依存しているだけの人を分ける境界線となる。
失われる“自分の価値”
最後に、若手社会人にひとつ厳しい問いかけをしたい。「もし、基礎を知らない新人がAIを使って良い仕事ができるのだとしたら、上司はわざわざ、あなたに仕事を頼むだろうか」。
答えはあまりにも明快だ。上司が直接AIに指示すればいいだけの話だ。人間がAIと上司の間に入って確かな価値を生み出せるのは、「成果物の品質を担保してくれる人間」として、AIの出力を評価し、品質を保証できる時だけである。それができない人間は、冷酷なようだが、上司にとって「いなくてもいい存在」になってしまう。
AIは魔法の杖ではなく、「仕事ができる人が、さらに速く・正確にやるためのツール」に過ぎない(今のところは)。強固な基礎知識やスキル、経験があってこそ、AIは初めて強力な武器になる。逆に、基礎なきAI活用は、自分の市場価値だけでなく存在意義すらじわじわと削っていく。
便利さの裏には必ずリスクが潜んでいる。甘い煽り文句に流されて何でもかんでも自動化する前に、AIは「仕事ができる人をさらに速くするツール」だ。その前提を忘れず、まず自分の足元を固めること。AIに依存するのではなく、AIを使いこなす「目利き」を鍛えることこそが、これからの時代に自分の価値を守る唯一の方法である。
