“高層ビル”という上モノまで作ってしまった後で、基礎部分から修正しようとすると途方もなく時間がかかってしまう。「ゼロからやり直したほうがよっぽど早い」という結論に至り、結局は倍以上のコストがかかることになる。これでは効率化どころか、むしろマイナスなのだ。
また、こうした作業は「夏休みの宿題を丸ごと親にやらせた」のと同じなので、新人にとってはAIの答えがどう間違っているのか、どう改善すればいいのか、自分ではわからない。つまり、どれだけ成果物を作ったところで、本人のスキルや経験値はまったく進歩しないというわけだ。
筆者は、このような「AI依存症」の新人たちによる現場の混乱を経験した企業が急増し、それに対応しようとしているのが今年の特徴だと感じている。
「AIを使わせないで新人研修してほしい」
「ツールの使い方ではなく、本質的な技術スキルをまず叩き込んでほしい」
AI活用が社会に浸透してきたからこそ、そんな声が大きくなっているのだろう。「安易な依存」にストップをかけ、あえて「AIに頼らない基礎力」を持たせなければ、現場が混乱するし、まともな人材も育たない。そうした強い危機感が、現場に渦巻いているようだ。
派遣現場で起き得る「悪意なき情報漏洩」
品質問題に加えて、もうひとつ見逃せない深刻なリスクがある。それが、客先に派遣されてプロジェクトに参画する「SES(システムエンジニアリングサービス)」型の現場で起き得る情報漏洩だ。
派遣エンジニアは、客先の環境とルールで仕事をする。機密性の高い設計書やソースコードを扱うことも多い。そんな折、「資料のフォーマットを流用したい」「内容をサクッと整理したい」といったほんの軽い気持ちから、客先の情報を個人のAIアカウントにポンと読み込ませてしまうケースが、実際に起きているようだ。
一部のAIツール(特に個人向け無料プランなど)では、入力データが「学習データへの転用」という形で公開されるリスクをはらんでいる。一方で、IT業界は、慢性的なエンジニア不足。未経験や文系出身でも採用される流れが拡大している。だから、最新のセキュリティリテラシーをしっかり教育しないまま現場に出るとどうなるか。
