さまざまな工夫をして駐在生活を乗り切ったが、「お互いの大変さが本当にわかったのは、帰国後だったかもしれない」と振り返る。
2024年4月に帰国し、前川さんはすぐに大学に復帰。夫はちょうど転職のタイミングで1カ月間、家事育児を担当し、海外駐在時とガラッと役割が逆転した。
「私は働ける彼が羨ましいと思っていたけど、毎日働くのってやっぱり大変だなと思いました」と笑う。夫も、ここまで家事育児だけの時間を過ごしたのは初めてのことだった。
あるとき、前川さんは海外赴任で過労死した人の裁判を傍聴する機会があった。
「私は『なんてつらかったんだろう』と思って、裁判の内容を夫に話したら、『そんなの海外じゃ普通だよ』と言われて。そうだったんだ。あんなにコミュニケーションを取っていたつもりだったのに、夫の状況を初めて知ったんです」
前川さんによると、海外拠点では日本の労働基準法が守られないことがあるようだ。日本人の人数が限られているためたくさんの業務がのしかかり、マルチタスクになりやすい。
自分の業務に加えて、外国人部下たちのマネジメント、日本から来た人のアテンドや空港送迎、休日の接待ゴルフなど労働時間の境界もあいまいになり、長時間労働に陥りがちだ。
海外駐在は一緒に生活していても、住む世界が異なってしまう。前川さんは意識して夫婦の時間を確保していたが、そのような時間がまったくない駐在家族も珍しくないという。
駐在妻「つらいなんて言うのは贅沢」
海外帯同で健やかに暮らすために大事なことは「まずは自分が苦しい状況であることに気づくことが第一歩」だと言う。
「皆さん『贅沢な悩みだから』と、自分の気持ちを見て見ぬふりをしがちです。きれいな家を用意してもらってこんなに恵まれているのに、つらいなんて言っちゃいけないと我慢してしまう。でも、異国で生活を立ち上げるだけで、大変に決まっています。つらいと言ってもいいと、自分に許可を与えてあげてほしいなと思います」
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【理解されず相談しづらい】
