「あとで聞くと、『針ヶ谷さんって割とあの人にはいいね付けますよね』と言われたりする。見られてるんですよね(笑)。でも一つ成功体験ができると、自信がつく。自信がつくといい循環に入って、どんどんいいものが出てくる」
テクノロジーの専門家でありながら、目線はどこまでも「人」に向いている。そのギャップが、針ヶ谷氏の持ち味なのかもしれない。
「泳いでいるときが一番考えられる」
新たなリーダーとして何を心がけているか。針ヶ谷氏は意外な答えを返した。
「睡眠時間をちゃんと取ることです。一番良くないのは間違った意思決定をすること。判断力や機嫌が変わるようなことは極力しないようにしています」
加えて、毎日30分は悩み事をすべて忘れて、自分の考えたいことだけを考える時間を取る。ただし、じっとしていると思考が散ってしまうタイプだという。
「一番考え事ができるのは、実は泳いでいるときなんです。体は泳ぐことにずっと使っているので、頭がオフラインになって考え事ができる。昔はオフィスをうろうろ歩いていたんですが、チームメンバーから『針ヶ谷さん、めちゃくちゃうろうろしてますよね』と言われまして。今の立場だと、何かあったんですかと心配をかけてしまうので(笑)」
最後に、若いビジネスパーソンへのメッセージを聞いた。
「何らかのコミュニティに入る、あるいは自分で作ることをおすすめします。本に書いてあるスキルや知識は、出た瞬間にAIが学習する。大事なのは知ることではなく、実感すること。実感は自分でPDCAを回さないと得られない。人同士の情報交換やディスカッションで血肉にしていくのが、AI時代は逆に効率がいいと思います。人を動かすのも、実感ですから」
AIでは代替できない信頼関係。組織の機微を読み取る力。現場のリーダーを変える伴走。そしてそれらを支える、コミュニティの中での実感の積み重ね。
テクノロジーの最前線で20年を過ごした新リーダーが語る「残る仕事」は、どこまでも人間味のあるものだった。
