「親ガチャ」という言葉には、生まれ持った素質や環境ですべてが決まってしまうという、どこか冷めた諦念が漂っています。その一方で、「努力で何とかなるはず」と信じて子どもを追い詰めてしまう「教育虐待」も後を絶ちません。
しかし、「能力は遺伝か環境か」という論争には、行動遺伝学という学問によって、すでに1つの結論が出ているようです。世界レベルで遺伝子の解析が進み、遺伝子の塩基配列から個人の遺伝的資質までわかる時代になったのです。
そこで、30年間にわたり1万人以上の双生児研究をしてきた、日本における行動遺伝学の第一人者である慶應義塾大学名誉教授の安藤寿康氏に取材をしました。
「親ガチャ」の絶望を「戦略」に変える
「すべての生物は遺伝子からできています。私たち人間も例外ではありません。あらゆる側面に遺伝の影響がある。これは行動遺伝学の原則です。容姿や身体、病気へのかかりやすさだけでなく、学校の成績や運動能力、勉強の好き嫌いや得意・不得意にも、遺伝の影響は表れます」と安藤氏は語ります。
一見すると、生まれですべてが決まってしまうという「親ガチャ」を肯定する結論のようにも聞こえますが、安藤氏は「遺伝で決まるのではなく、遺伝の影響を受けているのだ」と強調します。
実際、データを深く読み解くと、私たちが「自分という素材」や「わが子の個性」をどう乗りこなすべきか、最高の知恵が見えてきました。
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【衝撃のデータ、知能の遺伝率は年齢とともに「上昇」する】

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