東洋経済オンラインとは
キャリア・教育 #子どもたちのウェルビーイングを高めるために 今、私たちができること

学力「遺伝の影響が50%」、中学生以降は遺伝的エンジンで走り出す…努力や教育による底上げはムリ?親や先生ができること

8分で読める
子どもの勉強がうまくいかずに悩む親
(写真:kapinon / PIXTA)
  • 中曽根 陽子 教育ジャーナリスト/マザークエスト代表
2/4 PAGES

「親が頑張れば能力が伸びる」と信じている親は多いかもしれませんが、安藤氏が引用する双生児研究のメタ分析データは、その直感を裏切ります。

身長や体重など身体的な形質の遺伝率に次いで、最も遺伝の影響を受けるのは「知能(IQ)」と「学力」です。その割合は約50%。親の年収などで階層の再生産が行われると指摘される「社会経済的なバックグラウンド」を含む環境の影響は30%程度だそうです。

衝撃のデータ、知能の遺伝率は年齢とともに「上昇」する

さらに、行動遺伝学の知見で最も興味深いのは、遺伝の影響が年齢とともに「強まっていく」という事実です。

児童期(小学生まで)は環境の影響が40〜60%を占めるのに対し、思春期・青年期(中学生以降)になると遺伝率が60%と逆転し、環境の影響は30%程度に減少してしまいます。

安藤氏が行った日本の大学生を対象にした研究では、遺伝率83%という数字が出たそうで、成人になるとほぼ共有環境の影響がなくなるということがわかりました。

なぜ、成長するほど遺伝の影響が強くなるのでしょうか。

児童期までは親が用意した環境(家庭、塾、習い事)の中にいるため、「共有環境」の影響が見かけ上大きく出ます 。そのため、この時期の親は「自分の育て方次第でどうにかなる」という手応えを感じやすいのです。

しかし、中学生くらいになれば、子どもが自らの意思で友人を呼び寄せ、興味の対象を選び始めます。すると、脳の中に眠っていた「遺伝的素質」が目覚めて、自分に合った環境を自ら選ぶ「自律」が始まります。

安藤氏はこれを「遺伝子による環境選択(能動的相関)」と呼び、「年齢が上がるほど、その人が本来持っている設計図(遺伝)どおりに自分を構築していくプロセス」だと説明します。

「中学生になって親の言うことを聞かなくなった」と悩む親は多いですが、それは反抗ではなく、子どもの脳が「自分自身の設計図」に従って自律的に動き出した証拠です。

次ページが続きます:
【人間は“形状記憶合金”、「教え込む人」から「環境のデザイナー」へ】

3/4 PAGES
4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

キャリア・教育

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象