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学力「遺伝の影響が50%」、中学生以降は遺伝的エンジンで走り出す…努力や教育による底上げはムリ?親や先生ができること

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子どもの勉強がうまくいかずに悩む親
(写真:kapinon / PIXTA)
  • 中曽根 陽子 教育ジャーナリスト/マザークエスト代表
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多くの親や教育者が陥る罠は、「環境が人間を完全に形作れる」という過度な期待です。従来の「標準化されたシステム」で全員を同じ型にハメる一斉授業では、どうしても「平均」に合わせることが正解とされがちです。

しかし、一人ひとりの「反応の良さ(遺伝的素質)」がバラバラである以上、同じ指導法が全員に効くはずがありません。 安藤氏は、脳の予測性という観点から次のように提案します。

「脳は単に受け身で変わるのではなく、自分の特性に基づいて『次に何が起こるか』を予測しています。子どもが何かに強い興味を示すとき、それは脳が刺激に対して『予測の的中』を感じている瞬間です。

教育において重要なのは、脳を無理やり書き換えることではなく、ワクワクして食いつくような質の高い教材やインタラクションに出会わせることです。一見狭い分野でも、奥が深い環境を用意することで、子どもの個性が引き出される可能性が高まるからです」

親や教育者ができる最大の貢献は、誰かの形を変えることではありません。その人が本来の自分として自律し、自らの遺伝的エンジンで走り出す瞬間を信じて見守る「伴走者」になることです。

安藤氏は、人間は生まれながらに「学習欲」を持つ教育的な動物であり、学校という形式に固執せず、多様な学びの選択肢(フリースクールなど)を肯定する姿勢も必要だと指摘します。

AI時代の教育者は、平均を目指すのではなく、個々の「反応の良さ」を観察し、脳が喜びを感じる環境をデザインすることが求められているのです。

安藤寿康(あんどう じゅこう)慶應義塾大学名誉教授/1986年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。2001年同大学文学部教授。03年コロラド大学行動遺伝学研究所訪問教授、13年キングスカレッジロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所訪問教授。23年より慶應義塾大学名誉教授。専門は行動遺伝学、教育心理学、進化教育学。特に認知能力やパーソナリティなど心理的形質の発達に及ぼす遺伝と環境の影響に関して、98年以来1万組を越す双生児のデータにより研究を行っている。さらに最近では進化理論や脳科学もふまえ、教育の生物学的基盤に関する研究にも取り組んでいる。主著に『教育脳』(大和書房)、『能力はどのように遺伝するのかー「うまれつき」と「努力」のあいだ』(ブルーバックス)、『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新書)など(写真:本人提供)

科学は私たちを自由にする

行動遺伝学が説く「真実」は、私たちを宿命に縛り付けるものではなく、努力や教育のあり方を見直し、最大効率の人生設計を描くための「最高の攻略本」になり得るものです。

私たちが持つべきスタンスは、遺伝を諦めの口実にも環境でねじ伏せる手段にもせず、「遺伝という個性を乗りこなす」という戦略的な視点です。波の性質を知り、どう乗りこなして目的地へたどり着くか。私たちが人生の「乗り手(ライダー)」になったとき、教育はもっと自由で、喜びにあふれたものに変わっていくはずです。

「遺伝の影響」を知ることは、決して諦めのためではありません。むしろ、自分や子どもの人生を、より確かな手触りを持ってデザインし直すためのスタートラインです。

今日、少しだけ時間を取って、わが子を、あるいは自分自身を眺めてみませんか。それは、本来の輝きを見つけ出すための、大切な一歩になるはずです。

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