年齢を重ねた女性たちを対象とした研究の新たな成果が、シンプルなメッセージを発している。より長く健康に生きるためには、筋力が重要だということだ。
米医学サイト「JAMAネットワーク・オープン」に掲載された62歳を超える数千人の女性を追跡した調査・研究は、筋力の小さな変化でも有意な影響をもたらし得ることを明らかにした。
その恩恵を受けるのに、激しい筋力トレーニングは必要ない。重要なのは、有酸素運動に加えて、基礎的な筋トレを運動習慣に取り入れることだ。
この知見は、1990年代以降、数万人の女性を追跡してきた大規模研究「女性健康イニシアチブ」によって得られた。同プログラムの一環として研究者は各家庭を訪問し、握力や炎症に関する血中指標、活動量などを測定した。
その後、60代から90代の約5500人を対象に長期データを分析した結果は明確だった。筋力が強いほど寿命が長い。政府が推奨する週150分の有酸素運動を行っているかどうかは決定的ではなく、むしろ意外な指標である握力が寿命と関連していることが分かった。
研究を主導した疫学者のマイケル・ラモンテ氏は、握力が健康状態の特にセンシティブな指標となる理由のセオリーを示す。加齢しても大腿四頭筋やハムストリングス、臀筋は日常動作で使われ続ける一方、上半身は使われなくなりやすい。その結果としての衰えが、小さいが重要な変化として表れるという。
ラモンテ氏はこれを「ピクルス瓶のテスト」と呼ぶ。瓶のふたが開けにくくなったとき、それは何らかの変化の兆しかもしれない。基礎疾患の可能性もあれば、筋肉量の低下かもしれない。「いずれにせよ、注意を促す黄信号」だとしている。
年齢問わず
こうした知識は、有酸素運動のみが強調されていた時代に育った世代にとって特に重要だ。研究者の間では、筋肉量が寿命だけでなく、加齢後の可動性や自立維持にも重要であるとの認識が強まっている。
今回の結果は、今後の米国の運動指針改善にもつながる可能性がある。ラモンテ氏によれば、多くの女性はいずれ、有酸素運動の基準を満たせなくなる時期を迎える。
病気やけがによって散歩や水中エアロビクスに出かけられなくなるケースもあるが、この研究はそうした場合でも筋力維持に取り組むことで寿命を延ばし得ると示唆している。
では、具体的に何をすべきか。マクマスター大学(カナダ)のスチュアート・フィリップス教授(運動学)は、握力に注目するからといって握力だけを鍛えるべきだと誤解してはならないと指摘する。
「握力は有用な指標であって、トレーニングの処方ではない。重要なのは全身の筋力であり、包括的な筋トレが健康的な加齢にとって極めて重要というのが、より広範なメッセージだ」と言う。
また、高齢の女性がパーソナルトレーニングを受けたり、ジムに通ったりする必要もない。ゴムバンドや自重を使った運動で十分であり、70代後半以降であれば缶詰を持ち上げる程度でも効果があるとラモンテ氏は説明する。重要なのは筋肉に刺激を与えることだ。
その刺激は個人だけでなく社会にとっても重要だ。米国では高齢者が最もハイペースで増えている人口層であり、女性の割合が高い。この層が小さな変化を取り入れて寿命を延ばせれば、公衆衛生上の大きな成果となる。
もっとも、若い女性にとって今回の結果が何を意味するのかは慎重に考える必要がある。フィリップス教授は、人生の他の段階における筋肉量と寿命の関係について過度な結論を導くべきではないと警告する。
ただし、あらゆる年代の女性が運動習慣に筋トレを組み込むことは有益だとしている。複雑である必要はない。
米国スポーツ医学会(ACSM)は最近、健康な成人向けの筋トレに関するアドバイスを更新した。その内容はシンプルで、週2回の全身トレーニングを行うこと。多様な運動が効果的であり、重い負荷や限界までのトレーニングにこだわる必要はない。
女性が有酸素運動だけで優雅に年齢を重ねられるわけではないという証拠は増え続けている。筋肉にも定期的に負荷をかけるための小さく継続的な工夫が必要だ。
高齢女性がそれを実践するには、医師や介護者、さらには運動指針を定める政府からの支援が一層求められる。一方で若い女性にとっては、筋トレを生涯にわたる習慣として築くことが将来的な利益につながると言える。
(リサ・ジャーヴィス氏は、バイオテクノロジーや医療、製薬業界を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。以前はケミカル&エンジニアリング・ニュースのエグゼクティブエディターでした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)
著者:Lisa Jarvis
