そこで、日本である。台湾問題をめぐっては、第2次安倍晋三政権下(在任2012~20年)で成立した安全保障法制に基づき、台湾有事を想定した自衛隊とアメリカ軍による共同訓練が重ねられてきた。
中国軍も対抗する形で台湾周辺での大規模な軍事訓練を続けてきた。その一方で安倍氏以降、歴代の首相は「台湾は中国の一部」とする中国への配慮から台湾有事への具体的な言及は避けてきた。
高市発言の大きすぎる余波
ところが、高市首相は25年11月の衆院予算委員会で立憲民主党(当時)の岡田克也氏の質問に対し、台湾有事の際、中国が「戦艦を使って武力行使も伴えば、存立危機事態になりうる」と答弁。台湾有事で自衛隊出動の可能性を示したもので、歴代の政府見解を踏み出す「慎重さを欠く不用意な発言」(自民党幹部)だった。
中国は激しく反発し、日本への観光自粛や日本のタレントによる公演の中止などが打ち出された。さらに高市政権について、防衛費増額や武器輸出の解禁などを指摘して「新型軍国主義」と批判。レアアースの対日輸出規制も示唆している。
高市首相の発言から半年が過ぎた。高市氏の発言なのだから、高市氏自身が収拾に動かなければならないが、その動きは見られない。この間、閣僚同士の接触もなく、日中関係は急速に冷え込んでいる。
一方で高市首相は26年3月の日米首脳会談で、トランプ大統領を「世界に平和と繁栄をもたらすはドナルド(トランプ大統領)だけだ」と持ち上げるなど、アメリカとの親密な関係構築に躍起となっている。
日本にとってアメリカは唯一の同盟関係、中国は最大の貿易相手国だ。日米同盟が強化に向けて進み、中国との対話は途絶えている中で、台湾問題でアメリカが中国に押し込まれようとしている。本来なら日本が米中の間に立って、緊張緩和に動くべき局面だが、高市首相の発言で動きが取れないのが実情だ。
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【日本外交の試練】
