トリウムを利用する場合の特徴の1つとして、原子炉での中性子照射の結果、高エネルギーのガンマ線を放出するタリウム208が生み出される点が挙げられる。この結果として、トリウム燃料の核兵器転用を困難とさせうるという利点がある反面、例えば軽水炉で使用する場合、燃料棒の交換は従前以上の手間(コスト)がかかるようになる。
トリウム利用の利点を生かしつつ、このような運用面での負担を低減しうる方策として「溶融塩炉」が検討されている。この方式自体は1950年代から検討・実験されてきたが、軽水炉、さらにはウランの利用が主流となったため、70年代以降、大々的に取り上げられることはなくなった。
21世紀に入り、地球温暖化対策や軽水炉のサプライチェーンのボトルネックの解消などから再び脚光を浴びることとなり、今では世界で10以上のスタートアップ企業が開発に取り組んでいる。
アメリカと中国が取り組む「トリウム溶融塩炉」
溶融塩炉は高温・常圧の液体状の溶融塩に核燃料を溶け込ませて運転する。燃料棒が不要となるだけでなく、上述した最大のボトルネックである圧力容器を必要としない。燃料棒を使用しないため、その製造と交換にかかるコストを大幅に削減できる。そのため、小型炉としても高い経済性を担保できる。
また冷却水やジルコニウム製被覆管もないため、水素爆発を引き起こすこともない。安全性や運用性も高い。AIデータセンター向けにもうってつけだ。これはアメリカに基盤産業を蘇らせ、エネルギーの安全保障を確保するトランプ政権の方針とも一致する。なお、中国では11年にトリウム溶融塩炉の開発への着手を表明し、23年10月に初臨界を迎えた。
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