この使用済み核燃料の課題の解決に期待をされているのが、トリウムを利用することだ。トリウムはウランに比べて原子番号で2つ小さい元素であり、核燃料になりうる。核燃料だから珍しい元素だと思うかもしれないが、ありふれた元素で、インドやブラジル、オーストラリア、ノルウェーといった政情の安定した国に多い。アメリカにも60万トンほどが確認されている。
日本は資源量としては多くはないが、福島県に産する「石川石」(いしかわせき)に含まれる。鳥取県の三朝(みささ)温泉にはトリウム泉があり、「トリウム含有量世界一」と言われている。トリウムはそのウランに比べた原子番号の小ささから、中性子を吸収しても長寿命のMAまで肥大することができず、その生成量を大幅に抑制できる。
トリウムが処分の困難さを回避する
同じ理由で、トリウムが中性子を吸収してプルトニウムに至ることは難しく、その生成量を極めて少なく抑えられるのが特徴だ。すなわち、トリウムを利用することで、使用済み核燃料の処分を困難にする2つの要因を回避しうるのだ。
一方で、トリウム自体は非核分裂性であるため単独では核分裂反応を起こすことができない。何らかの「火種=核分裂性同位体」が必要だ。そこで、ウランの使用済燃料から回収したプルトニウムを火種として利用することで、負の遺産であるプルトニウムを効率よく燃焼・消滅させることも可能となる。
トリウムは資源論的に見てもう1つ重要な特性がある。それは、モナザイトなどのレアアース鉱物に不可避的に同伴しているということだ。
モナザイトからネオジム磁石に使用されるネオジムを抽出するためには、下流の工程に放射性物質が混入しないようにするため、まずトリウムを除去しなければならない。このトリウムは、活用されない限り、放射性廃棄物だ。アメリカでもカリフォルニア州マウンテンパスで90年代まではレアアースの生産を行っていたが、中国によるダンピングにより競争力を喪失した。02年に閉山したが、12年に再開している。
中国によるダンピングが可能であったのは、トリウムを尾鉱(びこう、選鉱の結果得られる低品位の鉱産物)に放置するといった処理コストの極小化を行ったためだ。レアアースの健全な確保を行うためには、トリウムに真摯に向き合わなければならない。この点でも、将来的な原子力の持続可能性を展望するのであれば、トリウム利用を選択肢に加えるべきである。
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【米中が競って開発中のトリウム溶融塩炉とは?】
