このような原子力の拡大をサプライチェーンマネジメントの視点で分析する場合、いくつかの切り口がある。1つは燃料の供給、もう1つは機器の供給、そして最後に廃棄物の処理・処分である。その切り口においてボトルネックの有無を検証しよう。
原子力の燃料にはウランが挙げられる。天然には0.7%しか存在しない核分裂性のウラン235を3%程度に濃縮した低濃縮ウランが用いられる。上述のAIデータセンター向けの原発でも、ほとんどがウランの使用を前提としている。
ウランがはらむ政治的リスク
ウランの資源は偏在しており、わずか3カ国(カザフスタン、カナダ、ナミビア)で世界の生産量の約75%を占めている。産出国に中東のような政治的な供給リスクは少ないが、その天然ウランの濃縮は高度な技術と投資が必要であり、更には核兵器転用にもつながる可能性があることから、ロシア、イギリス、フランスなど限られた国で行われているのみだ。
中でもロシアは世界シェアの40%を占めており、欧米に対して現在も供給している。22年のロシアによるウクライナ侵攻を見れば、ウラン燃料の供給が政治的リスクをはらむことは明らかである。
現在運転されている原発の約9割を占めるのは軽水炉であり、その8割を占めるのは加圧水型軽水炉で、残りは沸騰水型軽水炉(福島原発事故の炉型)である。軽水炉の製造にあたり、ボトルネックとなるのは圧力容器だ。1ギガワットの軽水炉の圧力容器の製造はほぼ1社、日本製鋼所に依存しており、その世界シェアは8割を超える。しかし、その製造キャパは年間4台程度だ。
日本から見るとサプライチェーンのボトルネックを握るという強みに見えるが、需要者から見ればリスクとなりうる。上述のAIデータセンター向けの原発では、Okloのように圧力容器を必要としない「液体金属冷却高速炉」もあるが、多くは小型の軽水炉である。
小型の軽水炉の場合も圧力容器は必要だが、日本製鋼所に依存することはない。アメリカでNuScaleのような小型軽水炉の開発が進められているのは、原子力のサプライチェーンのボトルネックを他国(同盟国といえども)に依存させないためでもある。
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【「使用済み核燃料」はどうするのか?】
