株価が急落したことで、その国の経済がおかしくなるというのはよくあることですが、株価急落で、中央銀行が危機に陥るなどという話は聞いたことがありません。
普通は、株価急落で経済がダメージを受けたら、中央銀行が金利を下げて資金を供給するなどして経済復活に向けて動きます。しかし、今、株価の急落に対応して金利を下げようとしても、政策金利が0.75%である以上、それしか下げられません。
しかも、日本では、株価急落で危うくなるのが日銀です。マーケットリスクをとってはいけない中央銀行が、日本最大のマーケットリスクをとっている。日銀は、世界的に見て、異様で異常な状態なのです。
23年9月30日、日本金融学会の講演において、植田総裁は、「日本銀行の収益や資本が減少すると通貨の信認が失われるか」について触れました。
学界には、中央銀行の収益や資本の減少が、金融政策運営に「悪影響を及ぼす」という見方も、「悪影響を及ぼさない」という見方もあると紹介したうえで、自身は大丈夫だと認識していると述べました。
こう述べるのは当たり前です。財務状況が最悪の中央銀行の総裁が、「悪影響を及ぼし得る」などと発言したら、その瞬間、その国の中央銀行と発行通貨への信用は地に落ちます。ですから「大丈夫」と言わざるを得なかったのです。
中央銀行が債務超過になっても大丈夫との学説は、中央銀行が伝統的金融論の教えにそってオペレーションをしていることが大前提だと思うのです。まさか中央銀行が伝統的金融論を破ったオペレーションをする前提では考えていないはずです。
伝統的金融論の教えに背き、「これでもか」というほどに買ってはならない金融商品を買ってしまっている日銀に、この学説が当てはまるはずはありません。
「大丈夫派」の学者先生たちも、こんなトンデモ中央銀行を想定した理論は組み立てていないはずですから。
発行する通貨が信任されるための条件
中央銀行が債務超過になっても、発行する通貨が信任されるためには条件があり、それは次の3つです。
①債務超過は一時的である。
②債務超過の原因が金融システムの救済であり、金融政策は厳格に運営されている。
③財政が緊縮に向かっている。
次ページが続きます:
【原因は異次元金融緩和】
