追突した特急「アルゴブロモアングレック号」は、ジャカルタとインドネシア第2の都市スラバヤ間を最速で結ぶ、いわゆる「大名列車」と呼ばれる存在だ。
最高速度は時速120kmで、事故現場を含む区間は時速115kmまで許容されている。通常は先行列車につかえることなく、停車駅以外ではトップスピードを維持することになっている。指令所は運行状況に応じて先行列車を待避させ、最低2閉塞を在線なし(特急の先の2区間に塞ぐ列車がない状態)にする。
つまり、特急は基本的に全区間、青信号(進行)現示しか受けずに走り続ける。思い込みが極めて発生しやすい状況で、同列車は過去にも衝突事故を起こしている。
保安装置未整備に触れない「公式見解」
とはいえ、人間はミスをするものである。最大の原因、そして責任は、長年、保安装置の設置を先送りにしてきた運輸省、そして鉄道会社にある。
それにもかかわらず、事故発生直後から鉄道会社、運輸省とも「タクシーが原因で衝突した」という内容を公式見解とした。よって、ほとんどのメディアは当初、下り電車がタクシーに衝突し、さらに特急に追突されたと誤報した。後に訂正されることになるが、原因がタクシーにあるという論点は修正されなかった。
保安装置設置を怠ってきたことが明らかになれば、運輸省、鉄道会社への批判は免れない。
そこで、政府は翌朝には4兆ルピア(約363億円)の追加予算を確保し、全国に1800カ所あるといわれる、日本でいう第三種・第四種踏切(警報機や遮断機のない踏切)の第一種(警報機・遮断器付き)踏切への格上げ、また立体交差道路の整備を約束した。ブカシティムール駅前方の踏切は、地元民が勝手に設置した警報機・遮断器なし(踏切警手は一般住民)の踏切だった。
この対策から、
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【大破した通勤電車の最後尾車両】
