この戦略は、すでに一定の結果をおさめている。舞台となったのは鳥料理チェーン「鳥良商店」だ。
鳥良商店は25年10月までに全27店でリニューアルを完了。生ビールを税抜き544円から税抜き299円へ、ハイボールを税抜き453円から税抜き199円へと大幅に引き下げ、メニュー数も89品から63品に絞り込んだ。その結果、売上高前年比111.6%を記録。消費者の心をがっちりつかんだ。
価格を下げて客数を増やし、運営を効率化する――この成功体験を磯丸ブランドでも再現しようとしているのが「磯丸酒場」なのだ。
SFPホールディングスは磯丸酒場を27年2月までに10店まで拡大する予定としており、上大岡はその1号店と位置づけられている。すでに2号店として大阪の磯丸水産天満駅前店も26年4月23日に磯丸酒場へ業態転換しており、展開は本格的に動き始めている。
「業態ごと変える」戦略は業界に一石を投じるか
居酒屋業界では今、「安くて専門性がある」業態が増えてきている。リブランディングを経て安くなった鳥良商店、ドリンク399円均一を打ち出した磯丸酒場のほかにも、注目すべきブランドはある。
例えば、「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」がそうだ。「博多劇場」で知られる一家ホールディングスが注力するブランドで、30年までに50店舗体制を目指す成長戦略を掲げている。今、消費者が求めているのは、漠然とした「居酒屋」ではなく、「これが食べたい・飲みたい」という明確な理由のある場所なのだろう。
値上げで客を失うか、値下げで利益を圧迫するか。企業が原材料高騰に苦しんでも、消費者は正直だ。同程度のクオリティなら、間違いなく安い店へと足を運ぶ。そんななかで、企業はどれだけ工夫を、努力を重ねられるのか――。
外食業界の広報に携わる者として、磯丸酒場が取った「業態ごと変える」という戦略は、業界全体に対する一つの問いかけだと感じた。
多くの外食企業が値上げと客離れの板挟みに直面するなか、ブランド資産を生かしながら業態を作り直すというアプローチが消費者に支持されるのか。1号店の上大岡で見た光景は、その答えの片鱗を示していたように思う。進捗を見守りたい。
