法的な視点も加えておきたい。
飲食店営業許可は、食品衛生法に基づき、保健所から取得する。あくまで「人の命と健康を守る」基準を満たすための制度だ。それを超えた領域は、原則として店の裁量に委ねられる。
飲食店と客の関係は本質的に「私的契約」である。提供されるサービスに納得し、対価を支払う双方の合意が成立していれば、基本的に外部が介入する筋合いはない。会員制であれば、なおさらだ。
ただし、時代の価値観は変わりつつある。ミシュランガイドは20年から、サステナブルな取り組みを評価する「ミシュラングリーンスター」を導入した。東京は13軒で世界最多だ。野菜の皮、未利用魚、経産牛、肉の端材などを積極的に活用する店が増えてきている。
少し前まで、高級店は「いいところだけを使う」のが当然だった。しかしいまや、食材を最後まで生かす技術と姿勢こそが、ガストロノミーの先端を示す指標となりつつある。
「私的契約」は法的に有効でも、店は外側からも見られている。この事実から、もはや誰も逃れられない。
「無駄」と「演出」の線引き
食材を粗末にする行為は、原則としてなくなるほうがいい。大食い競争、早食い競争、ビールかけ、シャンパンタワー、必要以上の食べ残し、食べ物を遊びに使う行為。これらは時代の感覚に照らせば、明らかに見直しが進められるべきだ。
ただし、無駄な消費が経済を回す側面も否定できない。市場経済はある程度の「過剰」を内包して回っている。
それでも、作り手の立場に立つとき、答えは比較的はっきりしてくる。自分が育てた食材が、店内にまかれ、食べられずに廃棄されることを望む生産者は、ほとんどいないはずだ。
情報が簡単に世界へと発信される時代となり、内側の論理だけで完結する時代は、終わりつつあるのかもしれない。
