イラン戦争よりウクライナのほうが大事――。混迷の度合いを深めるイラン情勢をしり目に、欧州がウクライナのゼレンスキー政権とタッグを組んで、侵攻を続けるプーチン・ロシアと軍事的に対峙する姿勢を明確にした。
5年目に入ったウクライナ侵攻は、「ゼレンスキー政権+欧州対ロシア」の構図が一層明確になっている。
言うまでもなくこの背景には、ロシアがバルト3国やポーランドに対し、近い将来、何らかの軍事的挑発行為を行うのではないか、との強い懸念がある。欧州にとって、ロシアとの対峙は、単なるウクライナへの支援ではなく、欧州を防衛するための「自分たちの戦争だ」との認識が固まった。
同時に、プーチン政権寄りの立場をより強めるアメリカのトランプ政権については、もはや頼りにできないとのウクライナと欧州共通の冷めた判断がある。
ウクライナへの16兆円超の無利子融資を決定
欧州の戦略的覚悟を象徴したのが、欧州連合(EU)が2026年4月下旬に実施を正式決定した900億ユーロ(約16.8兆円)の無利子融資だ。この巨額の融資により、ゼレンスキー政権は26〜27年いっぱいの戦争資金を基本的に確保したことになる。
トランプ政権は25年の政権発足後、ウクライナへの直接の武器支援をストップしているが、ゼレンスキー政権は当面、EU融資資金でアメリカから兵器を購入することで、防衛戦争を遂行できる財政的基盤を確保できた。
EUは対ロシア関係でさらに踏み込んだ。同じ時期にキプロスで開催した非公式首脳会議で、EU内で欧州防衛の協力強化に向けた協議を進めることで合意したのだ。つまり、欧州の安全保障に冷淡なアメリカが主導権を握るNATOではなく、欧州の政治・経済的共同体であるEU自身が、ロシアからの脅威に対抗していくとの方向性を明確にしたのだ。
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【NATO脱退をちらつかせるトランプ大統領】
