ゼレンスキー政権としては、宇宙からの偵察情報や防空兵器面でのトランプ政権からの支援継続は欠かせないとの立場だが、こうした支援が得られなくなる事態も覚悟している。
このため欧州との軍事協力を急拡大している。ウクライナはドイツとの間で4月半ば、AI(人工知能)を搭載した軍事用ドローンの共同生産計画を発表した。
両国が合弁会社を設立し、中長距離の攻撃型無人機を生産する。ウクライナが有する対ロシア戦の豊富な実戦データを基に、自律飛行や目標の識別にAIを活用するとみられる。
第1弾としてウクライナ軍向けに5000機を製造予定だという。イギリスも、ウクライナに対し年内に少なくとも12万機の無人機を供与すると発表した。
ドイツはドローンのほかにも、アメリカ製防空システム「パトリオット」用ミサイル数百発分の資金援助を柱とする、総額40億ユーロ(約7470億円)の防衛協定に合意するなど、ウクライナへの軍事支援面で中心的役割を果たしている。
第2次大戦での侵略の歴史を背景に武器輸出を厳格に管理し、22年2月のロシアの侵攻開始直後は、ウクライナへの武器供与に極めて慎重だったドイツだが、その後、戦車や対空ミサイルなどの供与に踏み切っている。
『ロシアは「イラン戦争の勝者」になれない』(2026年4月3日公開)で筆者が示したように、ロシア軍の地上作戦は現在停滞し、戦線は膠着状態だ。
一方で現代戦争のカギを握り始めたドローンをめぐっては、ウクライナがその開発力を生かして戦場で優位に立っている。今後はドローンにAIを組み合わせた兵器開発を欧州とも協力しながら進め、ロシアに対し、勢いに乗って攻勢を強める構えだ。
武力でロシアを侵攻継続断念に追い込むか、ロシア財政が戦費を賄えなくなるのを待つかというのが、ウクライナ側の戦争終結戦略だ。
しかし、その一方でゼレンスキー政権が、ロシアやアメリカとの間で何らかの形での戦闘終結実現を水面下で模索する動きは続いているのも事実だ。つまり、ウクライナは「和戦両様の構え」である。
ただし、停戦をめぐる水面下の駆け引きは続いている
26年2月に和平をめぐりスイス・ジュネーブで始まったウクライナとロシア、アメリカの3カ国高官協議で、ロシア側代表団の軍代表であるコスチュコフ軍参謀本部情報総局長官が、交渉の焦点であるウクライナへの安全の保証をめぐり、一定の柔軟姿勢を示唆したと言われている。
その後もウクライナ側はロシアとの間での捕虜交換の協議の裏で、ロシア軍部と何らかの妥協成立に向けた水面下での接触を続けている。
プーチンは依然として侵攻を継続する姿勢を崩しておらず、ウクライナ側もロシアやトランプ政権が求める東部ドネツク州にある非占領地帯からの撤退も拒否したままだ。
このため、戦闘終結合意に至る道筋は容易ではないとみられるが、その一方でプーチンが面目を失わない形で何らかの妥協案を探っているとの観測もある。
