また、食材や調味料を鍋に投入する、火を調節するのが「今だ!」という瞬間でなければ失敗、という場合がある。そんなとき、使おうとした調味料やキッチンツールが所定の場所にないと、探し回ってタイミングを逃す。
以上の事情で、キッチンはコックピット化する。できるだけ効率的に使えるように、調理中の動きに合わせてモノを配置し、取り出しやすい位置に置くこと自体は正しい。
キッチンが特定の人に限定される理由
しかし、他の家族がキッチンに入りにくくなる事情は複雑だ。理由は、4つあると筆者は考えた。
1つ目は、先に挙げたようにアイテム数が非常に多いこと。多くのキッチンは扉や引き出しで中が見えないため、ふだん使わない人は、どこに何を収納しているか覚えるのが難しい。しかも、同じ質問や同じ間違いをくり返すと、主な担い手に嫌がられる可能性がある。
2つ目は、清潔さに対する感性の違い。先日、あるバラエティ番組で男性アイドルが仲間の家に泊まったとき、洗い物とシンクをきれいにしたのだが、後日、仲間が「シンク側面」の洗い残しを不満に思っていたことを人づてに聞いた話をしていた。このように、どこまで清潔さを求めるかは個人差がある。
3つ目は、主な台所の担い手が、キッチンへの思い入れをあまり自覚していないこと。「家族にもっと料理してほしい」と相談する気持ち自体に、ウソはないかもしれない。しかし、家族が自分と同じ使い方をしないなら使わせたくない。そんな矛盾する気持ちを抱くのなら、キッチンはその人にとって聖域化している。
キッチンは、家族を養う場である。食べることは、心身を維持するだけでなく、共に食べる人たちの関係にも影響する。料理を作るキッチンは、命を司り家族を守る場とも言える。
となれば、固定された料理担当がいる家庭で、担当者に特別な思いが育つことは十分あり得る。毎日長い時間をそこで過ごし、家族のために食事を整えてきた人にとって、キッチンは人生が詰まった場所かもしれない。
4つ目の理由が、コミュニケーションの不足。収納場所がわからない、なぜ間違えられると腹が立つのかなど、話し合う家族は少ないのではないか。しかし、「なぜ」を説明すれば、モヤモヤする気持ちをお互いに言語化でき、解決の糸口が見えるようになる。
三木氏によると、料理をシェアする展開にならないのは、台所に入るのがほぼ1人の家庭だ。ふだんから料理当番が交替する家庭では、お互いの希望を話し合って使いやすいよう工夫している。
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【家事シェアがあまりうまくいかない家庭の特徴】
