三木氏によると、他の家事については相談を受けて話し合う中で担当を分ける、見直して減らすといった結論が出る。しかし、「もっとパートナーにも料理してほしい」という相談があっても、実際に料理当番のシェアには展開しづらいというのだ。
相談者たちの家庭では、キッチンを巡ってしばしばトラブルが発生している。
「海苔やワカメ、鰹節、一つ残ったパスタソースといった袋ものをどこへしまえばいいかわからない、という男性がいます」(三木氏)
夫がストック済みの調味料を重複して買う、調味料や皿の収納場所を間違えて叱られた、「シンク用のスポンジ」があると知らなかった、といった例がある。
「キッチンで家事をしようとして、途方に暮れる人」が生み出されるのは、キッチンが主に料理をする人(妻)だけが使いやすいコックピットと化しているからだ。その結果、他の家族が入りにくくなる。
しかも、主な台所の担い手には「パートナーや子どもに合わせて空間をつくり直すことへの抵抗感が、他の場所に比べて圧倒的に強い」と三木氏は指摘する。
「キッチン」は特殊な場所
そこでまず、キッチンの特性を洗い出してみよう。
キッチンは、家の中で最も家事の作業量と種類が多い場所である。食材を買ってきて収納する、生ごみを捨てるといった作業も入れれば、キッチンでは買い物・片づけ・収納・掃除・料理・洗い物・ごみ捨て、と主だった家事が一通り行われる。
特に大変なのが掃除。調理の過程では、食材や水がこぼれたり飛び散ったりしがちで、油汚れも出るからだ。日常的に料理する家庭なら、それが毎日何度も生じる。放置すれば油脂を含んだ汚れはこびりつき、ますます掃除が大変になる。水垢も溜まる。
次に、収納するモノの数や種類がとても多い。日常的に料理する家庭では、食器やキッチンツール、食材など数百ものアイテムが納められているはずだ。
調理は、緊迫感が強い作業である。食材を切ろうとして、指や手を切ることがある。火を使うと、油や食材があちこちに跳んで火傷の原因になる。家族が急に入ってくるなど、予想外の動きは危険を伴う。
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【他の家族がキッチンに入りにくくなる事情】
