識者やメディアの間では、比較的「純粋」と評される白沙屯に対し、規模と知名度で優るとも劣らない台中・大甲の鎮瀾宮がしばしば比較対象となる。同宮の会長は、元立法委員でもある顔清標氏が務めており、現在も大きな動員力と影響力を持つ存在とされている。
一方で、台湾の政治家にとって媽祖巡礼への参加は、単なる信仰行為にとどまらない。「民意を得る」ための重要な政治活動として位置づけられている。
実際、今年は頼清徳総統をはじめ、与野党の有力者が白沙屯媽祖を参拝した。国家の安泰を祈願する意味合いに加え、地域コミュニティーや有権者との関係を深める機会とも捉えられている。
総統など政治家も参加、中国の浸透工作対象にも
過去を振り返っても、重要選挙に臨む政治家の多くが廟を訪れ、神輿に関わってきた。数万人規模の信者の前で媽祖への敬意を示すことは、「庶民と同じ目線や価値観を共有している」というメッセージとなるためである。台湾の有権者も、こうした姿勢を1つの判断材料として見ているといわれる。
このように台湾政治とも深く関わる行事は、中国による浸透工作の対象になりやすいと指摘されている。
台湾の大陸委員会(MAC)やアメリカのシンクタンク「Global Taiwan Institute(GTI)」は、中国共産党が媽祖信仰を「中台統一に向けた架け橋」として戦略的に活用している可能性に警鐘を鳴らしている。
中国側は媽祖を「中台平和の女神」と位置づけ、「両岸は1つの家族」といった言説を通じてナショナリズムを喚起する材料として利用しているとされる。福建省・湄洲島にある総本山への無償招待や、ビジネス上の便宜供与などを通じ、台湾側の関係者に影響力を及ぼそうとする動きも報告されている。
次ページが続きます:
【台湾社会理解の象徴】
