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台湾社会の表裏を映し出す白沙屯の媽祖巡礼とは? 信仰と連帯、政治・裏社会・中国の影響も交錯する台湾社会の実像

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台湾・苗栗県にある白沙屯媽祖(写真:jack/PIXTA)
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一方、沿道で支援する側にとっても特別な意味を持つ。神輿は決まった経路を通らず、時には民家や工場、商店、飲食店、さらには病院に立ち寄ることもある。そうした場面に居合わせた人々は、「神に選ばれた」という感覚とともに、一体感を覚えるといわれる。

台湾ではしばしば「最も美しい風景は人と人との間にある」と語られる。人情や助け合いの精神こそが、この社会の誇りだという考え方である。東日本大震災やコロナ禍の際、日本が台湾から受けた支援を思い起こす人も多いだろう。その源流の一つに媽祖巡礼があると考えても、あながち誇張ではない。

信仰とハイテクが共存、裏社会との関係

清朝統治時代から続く台湾の伝統行事である媽祖巡礼だが、近年ではGPSアプリを使って神輿の現在地を共有する姿も見られる。信仰とハイテクが自然に共存している点も、この行事の特徴と言える。

2026年の白沙屯媽祖巡礼は、4月13日未明に出発し、16日に朝天宮へ到着、20日午後に拱天宮へ帰着した。参加登録者は過去最多となる46万人以上に達したとされる。26年は本殿の媽祖に加え、同じ廟に祀られる「炉主媽祖」、さらに近隣の廟に祀られる「山辺媽祖」の計3体が神輿に乗せられた。

白沙屯媽祖の神輿はピンクの布で覆われ、非常に速い速度で進むことから、「ピンクのスポーツカー」の愛称で知られている。

この巡礼を含め、台湾の媽祖信仰は強い動員力を背景に、地域社会や政治、さらには裏社会との関係が指摘されることもある。加えて、中国による「統一戦線工作」との関わりが論じられる場面も見られる。

台湾では伝統的に、大規模な廟や寺院の運営が「地方派閥」と呼ばれる有力者層や、時に犯罪組織と関係を持つ人物によって担われてきた歴史がある。

廟や寺院には多額の寄付金が集まりやすく、資金管理や周辺利権をめぐって地域の有力者が関与する構造が形成されてきた。政治、資金、そして暴力が複雑に絡み合う側面があったとも言われる。こうした構図は台湾の任侠映画でもたびたび描かれており、イメージしやすい人もいるだろう。

また、裏社会に近い人物が管理運営に関わることは、宗教活動を通じた「善行」のアピールという側面も持つ。社会的正当性や住民からの支持を得る、いわばイメージ改善の場として機能する場合もある。

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【中国も虎視眈々と見つめる祭礼】

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