前述したNHKのWEB記事だけでなく、テレビのニュース番組では、近頃「狭小住宅が若者に大人気」という特集が頻繁に組まれています。そこに登場する若者たちにインタビューすると、皆一様に「合理的な選択だ」「ミニマルな暮らしも悪くない」と言い、彼らが「あえて選んでいる」テイになっています。
でも現実は、「選んでいる」のではなく、「選ばされている」だけ。家賃が上がりすぎた結果、「しんどい思いをして遠方から通うか」それとも「狭さを我慢して都心に住むか」という、二択に追い込まれているのです。
これを「人気の狭小住宅」だの「多様なライフスタイル」だのと、さも自発的なブームのように、肯定的にとらえる空気。まったくもって「なんじゃそりゃ!」です。
かつて就職氷河期に、正社員になれず、アルバイトや派遣といった非正規雇用を選ばざるを得なかった若者たちを、「会社に依存しない新しい働き方」と報じたのと同じ構図で、「不都合な事実のすり替え」を感じてなりません。
私は今年で50歳。ドンピシャの「就職氷河期世代」で、大学卒業後ほとんどの期間をフリーターとして過ごしてきました。当時は「こちらの方が自由だし、自分にはこの生き方が合っている」とうそぶいていましたが、今振り返ればそれは、他に選択肢がなかった自分を納得させるための痩せ我慢でした。
イソップ童話の「酸っぱいブドウ」のキツネと同じです。「正社員」「社会保障」「ボーナス」といった手に入らないものに対して「これでいいのさ。羨ましくなんてないもんね」と、負け惜しみを自分に言い聞かせてきました。それはどこか、今の狭小住宅をめぐる状況と重なって見えるのです。
「3畳」がもてはやされる異様さ
物件サイトを覗けば、専有面積10m²(6畳)前後の極小物件が並びます。「6畳なら住める」と思うかもしれませんが、実際にはミニキッチンやトイレ、シャワーが室内に収まり、実際の居住スペースは3畳ほど。ロフト付きも多いものの、空間は分断され、はしごでの上り下りが必要になるなど、快適とは言い難いのが実情です。
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【“実質3畳”の部屋が「合理的」「ミニマル」と、もてはやされている】
