今ではすっかり見かけなくなってしまったが、どの町にもメーカーのロゴを看板に掲げた電気店があった。電球や電池が切れたときに買いに走ったことのある人もいるだろう。筆者は子どもの頃、お年玉を貯めて近所の電気店でラジカセを買った記憶がある。
そんな「町の電気店」は、大型の家電量販店やネット通販の普及とともに姿を消していった。
一方で、富山市にまったく逆の進化を遂げた電気店がある。それが富山市にあるK-DICである。所狭しと並ぶ家電製品と購買欲を刺激するポップ……。そんなイメージを抱いて店内に足を踏み入れると、そこにはまったく異なる光景が広がっていた。
K-DICでは、ショールームとして使用していたスペースにイタリアンレストラン「まちのイタリアン hallelujah(ハレルーヤ)」を併設している。木の温もりを感じる空間にはテーブル席のほか、小上がり席もあり、多くの客が料理や飲み物を楽しみながら会話を弾ませていた。
ランチのピーク時になると、店内に設けられた家電の商談スペースのテーブルと椅子が空席待ちの客で埋まる。春休み中だったこともあり、子ども連れの客の姿も多かった。
「御用聞き」で事業を広げていく
一見すると電気店とは思えないこの光景は、単なる思いつきや道楽で始まった業態転換ではない。K-DICの創業は1892年。もともとは鍋や釜、農具を扱う荒物屋で「必要なときに、必要な人へ、必要なものを届ける」という商いの原点は、電気店へと姿を変えた後も受け継がれてきた。
次ページが続きます:
【「お客さんが困っていることを解決する」店】
