通路からは、実際に稼働している浸漬・蒸溜設備を眺めることができる。コンベアのような連続的な動きはなく、私がよく口にする「かわいい~!」というような光景とは異なるが、蒸溜釜が光を反射して輝く様子は、どこか芸術的な美しさも感じた。
ツアーの終盤には、大型の蒸溜釜を模した外観の内部に設けられた「クリエイションルーム」へと案内される。内部は360度スクリーンに囲まれた空間となっており、「ROKU〈六〉」の原料酒のテイスティングやオリジナルカクテルづくりを体験できる。テーブルにも映像が投影されるなど、視覚的な演出が随所に施されているのが特徴だ。
単に味を確かめるのではなく、視覚演出と組み合わせることで、記憶に残る体験として設計されている。なお、ツアーには「ROKU〈六〉」の200mlボトルのお土産が含まれており、体験後も自宅で味わいを再確認できる仕組みだ。
ジン領域を成長軸と位置づけたサントリーの戦略
ジン市場は今後も成長が見込まれる一方で、競争も激化していく。そうした中で、製品の品質に加え、体験を通じてブランド価値を伝える取り組みは、差別化の重要な要素となる。
同社はこれまで複数の商品展開を進めてきたが、まずは「ROKU〈六〉」と「翠(SUI)」の2ブランドを軸に据える。改めて、「ROKU〈六〉」でカテゴリー価値を高め、「翠(SUI)」でユーザー層の拡大を担うという役割分担を明確にし、ブランド戦略を推進していく考えだ。中長期的には、ボタニカルの多様性を活かした商品開発など、多面的なアプローチを進めていくという。
そのなかで、今回の10億円投資した見学ツアーも大きな役割を果たすだろう。スピリッツ・リキュール事業、とりわけジン領域を成長軸と位置づけた同社の戦略が、今後どこまで成果につながるのかが注目される。
*2 8.4L換算
