金融政策の最終目標は物価の安定にある。それを達成するために、かつては中間目標が定められ、その中間目標の実現を経由して、最終目標である物価の安定を実現するという金融政策運営がなされていた。固定相場制度の時代の中間目標は為替レートの水準だったし、変動相場制度に移行した後はマネーサプライの増減だったわけだ。
ところが1980年代に入ると、金融の高度化を受けてマネーサプライと物価の間に明確な関係が観察されなくなった。そのため、中間目標を廃して、最終目標である物価の安定そのものを最初から重視する金融政策運営が行われるようになった。いわゆる物価目標(インフレターゲット)の誕生である。主要国では2%の目標が一般的だが、その水準に合理的な理由は特にない。
実際の金融政策の運営は、必ずしも物価目標だけが重視されるわけではない。景気への影響のみならず金融市場への影響も考慮される。ただし、中央銀行の責務が物価と通貨の安定にあることは紛れもない事実である。そして、中銀が金融政策運営に際して具体的な物価目標を掲げた以上、それを遵守しない中銀が発行する通貨など、信頼されない。
米欧は景気に配慮しつつ物価目標政策を貫徹
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)の場合はどうだろうか。FRBは金融政策を通じて、物価の安定のみならず雇用の安定にも責任を負う必要がある。雇用の安定とは、要するに景気の回復を意味する。通称デュアルマンデートであるが、FRBは物価と雇用のバランスを取って金融政策を運営するのであり、物価目標を軽視しているわけではない。
欧州連合(EU)の欧州中央銀行(ECB)も、物価目標を重視している。ECBも2%の物価目標を定めており、ユーロ圏の消費者物価(HICP)が目標を下回る局面では金融政策を緩和し、上回る局面では金融政策を引き締める。とはいえ、実際の金融政策運営は、かなり景気に配慮されている。具体的に、ECBのケースを振り返ってみたい。
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