さらに、テレビを持たない若い世代が「NHK ONE、契約してもいいかな」と思い始める糸口になる。SVODは1つでも強く見たい番組がシリーズであれば、契約の強いモチベーションになる。「推し」のタレントがレギュラーで出演している番組を見るために、ネットでNHKに契約するニーズも生まれるだろう。
NODの65億円という売上高を少し伸ばすために利便性を低く保つのか、それを捨ててNHK ONEの価値を大幅に高めてネット契約を大きく伸ばすのか。長期的な経営判断としては、明らかに後者が正しいと思う。
もちろん、放送法上の制約はある。NODは「任意業務」として「受信料収入から支出しない」ことが条件になっており、これを変えるには放送法の再改正が必要だ。著作権の再処理という膨大な作業も待っている。簡単ではないが、やるべきだと考える。
今の経営陣は目先の受信料収入の減少で頭がいっぱいだろう。だが経営とは、短期の収入を守るために長期の価値を毀損していないか、つねに問い続けることが仕事のはずだ。NODの65億円を守りながらNHK ONEが伸びない状況が続けば、どちらも中途半端なまま共倒れになりかねない。
会長以下の執行部は自分たちの任期中の責任で手いっぱい。そうであれば、執行部を監督する経営委員会マターかもしれない。
いまの決断がテレビ業界の未来を左右する
ただ、この方向性には懸念点もある。
NHKがリアルタイム視聴もアーカイブも受信料だけで提供するサービスになれば、民放の「TVer」と有料SVOD(「Hulu」「FOD」など)の組み合わせという現在の業界構造とは違う形になる。もし近い将来、NHK ONEとTVerを同じ入り口にしようとなったとき、その違いが障害になる可能性がある。
テレビでは、同じデバイス上でリモコン1つでNHKと民放各チャンネルを使える大きな利便性がある。ネット上でも同様にすると、「テレビ」が次の時代に合った進化ができるはずだ。NHK ONEとNODの統合には、そこまで視野に入れた検討も必要になる。
もっとも、誰もそこまで大きな視野でテレビの将来像を考えていないのかもしれない。しかし、少しでも業界の持続可能性を高めようというのであれば、避けて通れない課題だ。
