前編では『サラリーマン金太郎』の描写から、労働がかつては自己実現として機能していたことを確認した。「働いた分だけ幸せになれる」時代だったからこそ仕事がアイデンティティの1つとして確立していたのだ。
しかし、近年の作品を見ると、労働は自己実現どころか自己破壊へと向かうものとして描かれることが多い。たとえば2024年公開の『ラストマイル』をはじめとする野木亜紀子の作品がその証左といえるだろう。
「1年目、やりがいを感じた。2年目は順調。3年目、眠れなくなった」
私は映画『ラストマイル』を観て以降、このセリフが脳裏にこびりついて離れない。
24年に公開された『ラストマイル』は現代社会の生命線である物流の過程で起きる連続爆破事件を題材にした物語である。巨大物流センターで働く舟渡エレナ(満島ひかり)、梨本孔(岡田将生)らが事件解決に向け奔走する話であり、物流に携わる人々の労働を描く作品でもあった。
たとえば、先述の「1年目、やりがいを感じた。2年目は順調。3年目、眠れなくなった」はノルマが厳しく多くの責任を抱えるエレナの切実な台詞だ。
他にも、弁当を10分で食べて車で寝て1日200件配達する働き方の末、過労死したトラック運転手の「やっちゃん」や、チームマネージャーを務めながらも仕事が原因で自殺未遂にいたる山崎佑(中村倫也)など、労働によって「自己破壊」に追い込まれる人物が複数登場する。
そのうえ、「もっとやれる やらないと 頑張らないと」と労働を煽る台詞や、「働きすぎてカウンセリングにかかりながら薬飲んで無理して仕事して しまいにはドカン」といった台詞など、ハッとさせられるものが多い。
体を張って仕事することが美徳とされた『サラリーマン金太郎』の世界観とは真逆の世界だ。
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【ドラマで描かれる労働の負の側面】
