西岡:僕のイメージだと、知識は人間の頭の中でネットワーク化されて定着しているのですが、生徒たちの頭の中では、それがあまり起こっていない印象です。データベースに知識はたまっているけれども、すべて単発で、相互に関連していない。
ネットワーク化は抽象レベルで起こると考えれば、インプットの際に具体から抽象への落とし込みができていない、と言ってもいいいかもしれません。そして、この話は、近年の子どもの学力低下とも関連していると思います。
情報洪水が「自分の頭で考える」余地を奪う
西岡:2025年度の学力調査によると、子どもの学力は3年前と比べてかなり低下しています。その原因については、いろいろな指摘がありますが、1つには「手を動かさなくなったこと」があるのではないかと思っています。
タブレット学習の普及などにより、メモやノートをとる習慣がなくなったことで「考える力」が下がり、それが学力低下に表れているのではないか。スウェーデンのある研究でも、デジタル教科書によって学力が下がると示唆されていますが、平井先生はいかが思われますか。
平井:子どもの学力低下の背景としては、まず、あまりにも情報があふれていることが無視できないと思います。どんどん流れ込んでくる目の前の情報を処理するだけで頭がいっぱいになり、「自分で考える」ことができなくなっている。
しかも、その情報というのも「何の脈絡もないブツ切りの情報」ばかりです。ある時点で入ってきた情報を処理し、また別のある時点で入ってきた情報を処理する、という具合に、すべて単発的なんですよね。
西岡:つながりのない膨大な情報を1つひとつ処理していたら、たしかに、自分の頭で考える余裕なんてありませんね。
平井:考える余裕がなかったら、学力が下がるのも当然でしょう。
西岡:情報量といえば、今の英単語帳は、ものすごく記載内容が多彩なんです。昔の単語帳は「英単語」と「日本語訳」を並列している程度でしたが、今は、1つの単語につき発音記号から反対語・類義語・例文・覚え方のコツまで、懇切丁寧に記載されています。
しかし、そんな情報量の多い英単語帳を手にしている世代のほうが、旧世代よりも学力が低いという現実がある。つまり「情報量が多いほうが学習に有利」かと思いきや、そういうわけでもないんですよね。
平井:よくわかります。私は大きな書店も予備校もまったくない田舎育ちで、受験のときは各教科1〜2冊くらいしか参考書を買えませんでした。仕方ないので、その1〜2冊だけを何度も勉強していくんです。
すると個別の問題から全体の構造が見えてきて、徐々に応用できるようになりました。参考書が多いと「たくさん勉強した気」になるけれども、実際は、本棚の肥やしになることが多いのかもしれませんね。
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【真っ白な紙がもたらしてくれるもの】

