「まずやってみる」あずきバーの井村屋が130年続けてきた"実験"の正体 アンナミラーズ復活が示す「失敗」を力に変える流儀
フランス菓子の「La maison JOUVAUD(ラ・メゾン・ジュヴォー)」との提携もまた、井村屋の思想と重なるブランドだ。2003年に二子玉川の髙島屋南館で1号店がオープンし、現在は東京と名古屋、京都で店舗を展開している。
「当時髙島屋にはアンナミラーズが入っていましたが、新しいブランドでの挑戦を求められました。そんな中でフランスのラ・メゾン・ジュヴォーと出会い、アンナミラーズと同様に家庭の味や素朴さ、ファミリー感のある企業スタイルに共感して技術提携しました」(北角氏)
華やかさよりも日々の暮らしに寄り添う味。この価値観は、和菓子であるようかんともあずきバーとも通底している。ジャンルは違っても、井村屋が選ぶブランドには一貫した「選球眼」がある。
ラッセリアは「完成形」ではなく「実験場」
こうして築かれてきた複数のブランドを一つに集約したのが、ラッセリアである。
立地はJR・近鉄津駅前の市内中心部からやや離れた津大門商店街付近。好立地とは言いがたい。しかし取材時、平日にもかかわらず駐車場には県外ナンバーの車が並び、店内は賑わっていた。
「三重県は井村屋グループの創業の地であり、本社もあるのにアンナミラーズもジュヴォーも県内に販売場所がなく、地元の皆様にご不便をおかけしていました。このエリアはかつての商業の中心地でありながら、現在は人通りが減少しています。地域の活性化に貢献したいという思いもありました」(北角氏)
店内には、「菓子舗井村屋」と「アンナミラーズ」、「ラ・メゾン・ジュヴォー」の3ブランドが並ぶ。そのアイテム数は100種以上にもおよび、商品を選ぶ楽しさを提供するだけでなく、カフェスペースで過ごす時間やギフト需要にも対応する。また、店舗内に工房を設けることで、できたての商品を提供できる体制も整えている。
これだけでも十分に魅力的な店だが、北角氏が強調するのはそこではない。この店は、新たな商品やブランドを生み出すための実験場でもある、という点だ。ラッセリアは完成形ではなく、次の展開への拠点として位置づけられている。
井村屋の歩みを振り返ると、一貫しているのは「まずやってみる」という姿勢と、「人の真似をしない」という考え方にたどり着く。
米の卸売から菓子製造へ、和菓子から外食へ、そして、複数ブランドの融合へ。130年の歴史を通じて井村屋が繰り返してきたのは、常に「これまでにない組み合わせ」への挑戦だった。
ラッセリアは、その延長線上にすぎない。ここからどのような商品やブランドが生まれるのか。創業から130年を超えてなお続く試行錯誤は、まだ終わっていない。
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