崎浦氏はその後、日本にこのサーモンを持ち帰り、実際に魚売り場で刺身として販売したそうです。
この中で、ノルウェー側に対しても「日本では刺身や寿司ネタになるものは高く売れる」という認識を持たれたのでしょう。ノルウェー政府が本格的に日本市場への売り込みを強化したのは、その後のことだといいます。
つまり、生サーモン寿司の起点は、日本人の現場感覚から生まれ、それを後にノルウェー政府が国家戦略として拡大させたというのが、より正確な経緯なのです。
「よく食べているネタ」第1位
やがて、大手寿司チェーンでもサーモンが展開され、一気に人気ネタとなっていきました。
冷凍や解凍にも向き、加工しやすく、可食部もまとまって取れる。さらに白いシャリに対してサーモンピンクが映えることから、見た目の華やかさでも消費者の関心を引きました。
脂があり味が濃いサーモンは、現代の嗜好に合致しており、やがてマグロと並ぶほどの人気を獲得しました。
マルハニチロ(現Umios)が2025年に発表した「回転寿司に関する消費者実態調査2025」では、「よく食べているネタ」でサーモンが47.1%と第1位を占め、2012年から14年連続でトップを維持しています。
なかでも女性では約52%が「サーモンが好き」と回答しており、圧倒的な支持を得ています。時代に合った寿司ネタとして広く受け入れられた結果といえるでしょう。
日本では「サケは焼いて食べる魚」から、「サーモンは生で食べる寿司ネタ」へと価値が転換しました。
その背景には、ノルウェーの冷涼な海が育んだ養殖環境と、日本人の柔軟な食文化の受容力、そしてそれをつなげた1人の日本人の観察眼がありました。

