人工衛星100万基で宇宙にAIデータセンター構築へ、イーロン・マスク構想に懸念が広がる背景と問題点
マッキンゼー・アンド・カンパニーが昨年4月に発表したレポートによると、米国内の地上のデータセンターへの設備投資額は2030年までに5兆ドルを超えると予想されている。そのなかでもGoogleはデータセンターへの投資をさらに加速させており、今月にはテキサス州に建設するデータセンターに400億ドルを投じることも発表した。
だが、データセンターの建設ラッシュはAIトレーニングのために電力消費も著しく増大させている。Googleの2025年度環境報告書によれば、2020年時点では同社のデータセンターのエネルギー消費量は1440万MWh(メガワット時)だったが、2024年には約2倍の3080万MWhにまで増加した。
また米エネルギー省が2024年末に発表した報告書では、米国内のデータセンターによる電力消費は過去10年間で3倍に増加しているという。しかし、AIブームによるデータセンターの建設ラッシュはとどまるところを知らず、その電力消費は2028年までにさらに2~3倍に増加する可能性があるという。これは米国全体で使用される電力の最大12%をデータセンターだけで消費してしまうことを意味する。
さらに、地上のデータセンターには、コンピューターの発熱を冷やす空調システムが、冷却水を大量に消費するという問題がある。The New York Timesは、マイクロソフトがデータセンターで使用する水の量が、2030年までに現在の2~3倍になると予測していることを報じている。
こうした背景を考えると、Googleが言う「地球上の全エネルギーの100兆倍のエネルギーを持つ太陽光」を、天候に左右されず常時発電に利用できる軌道上AIデータセンターは、AI企業には魅力的なはずだ。
発熱・冷却の問題や、宇宙放射線に関する問題は技術的なものであり、関連技術の研究開発が進めば、いずれは解決されていくだろう。だが、軌道上AIデータセンターの実運用におけるコストがどれぐらいになるのかは、まだ現時点ではなんとも言いようがないのが実際のところだ。
マスク氏は、SpaceXのAI衛星は運用コストやメンテナンスコストが「ほとんど」かからないと主張しているが、マスク氏の将来予想の多くは極端に楽観的であるため、鵜呑みにはできない。この主張もAI衛星コンステレーションの維持に現実的にかかる費用を可能な限り軽視した場合の話として、慎重に評価する必要がある。
コスト面の不透明さ
では、軌道上AIデータセンターの打ち上げや運用にかかる費用はどれほどになるのだろうか。ドイツ・ミュンヘン工科大学の昨年11月の報告書によれば、軌道上AIデータセンターは稼働までにかかる初期投資額が地上のAIデータセンターの約3倍になると見積もっている。また運用コストも、やはり軌道上のほうが高くなるとのことだ。
一方、Googleはもっと楽観的で、2030年代半ばまでに打ち上げにかかる費用は低下し、軌道上AIデータセンターの打ち上げおよび運用コストは、同等の能力を持つ地上AIデータセンターの年間エネルギーコストとほぼ同等になる可能性があるとしている。





















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