人工衛星100万基で宇宙にAIデータセンター構築へ、イーロン・マスク構想に懸念が広がる背景と問題点
AIデータセンターを軌道上で稼働させようとしたとき、まず問題になると予想されるのが、冷却の問題だ。宇宙空間の平均温度はマイナス約270℃という極低温だが、ほぼ真空の環境であり、複雑な計算処理を行うGPUなどから発生する熱を地上のように空気や水によって熱を逃がすことができない。そのため、発生した熱は主に熱放射によって放出するしかない。熱放射とは、物体が自ら持つ熱を電磁波(赤外線)として空間に放出する現象のことだ。
元NASAシステムエンジニアのケビン・ヒックス氏は、「大量の計算要求を処理することを主な目的とする衛星(軌道上AIデータセンター)は、他のどの種類の衛星よりも多くの熱を発生するだろう」「冷却は設計上の別の側面であり、理論的には可能だが、膨大かつ複雑な追加作業を必要とする。そのような冷却システムの耐久性には疑問がある」と述べ、発熱の大きなAIデータセンターを構成する人工衛星を冷却するのは困難との見方を示している。
ただ、宇宙エキスパートのなかには肯定的な考えをもつ人もいる。宇宙専門のYouTuberであるスコット・マンリー氏は、Starlink衛星の最新バージョンが、約30m2の太陽光パネルからの電力供給で内部の通信機器を動かし、電力を電波に変換して地上に送信できることを指摘し、役割と規模は異なるものの、すでにSpaceXには宇宙空間で大きな発熱を伴う電子機器を稼働させられるだけの技術基盤があると述べている。
宇宙放射線のリスク
宇宙空間で電子機器を動かす際には、発熱の処理問題だけでなく、宇宙放射線の影響も考慮しなければならない。
宇宙放射線は、コンピューター機器のメモリーに対し、ビット反転と呼ばれる現象を引き起こすことがある。ビット反転とは、0と1だけで表現されるデジタルデータにおいて、1つ以上の値(ビット)が0から1、または1から0に書き換えられてしまう現象のことだ。コンピューターは、たった1つのビットが反転しただけでも、そのデータ全体が意味を成さなくなってエラーになったり、異常動作を引き起こす可能性がある。
もちろんコンピューターの多くには、ビット反転が引き起こす誤りを訂正する機能もある。だが、AIに使われる最新の半導体は微細化が進んでおり、高いエネルギーを持つ宇宙放射線への耐性が相対的に低くなる傾向がある。
そもそも、AI用のGPUやそのデータを記憶するストレージ部品は、地上でも故障しやすいのだから、仮にSpaceXが軌道上AIデータセンターに採用するAI用チップに高い放射線耐性を確保できたとしても、宇宙放射線によってどれほどのビット反転が起き、どれぐらいの故障率になるのかは予想が難しい。
そして、地上であれば故障したパーツを交換すればよいだけだが、軌道上で故障が発生した場合、修理をするのはコスト的に合理的ではない。





















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