賃上げは「コスト」か?「投資」か?春闘でバレる「経営者の頭の中」

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こうした違いは、社内の問題にとどまりません。いまや人的資本は、投資家が企業を評価するうえで重要なポイントになっています。

私が会長を務めるUniposが3月に公表した調査では、投資家の6割以上が「人的投資」を重視している一方で、財務指標への影響まで開示できている企業は4%にとどまるとされています。

この数字は象徴的です。

多くの企業が人的資本を語りはじめた。けれども、それが企業価値とどうつながるのかまで説明できている会社は、まだごく少数だということです。

「形式的な開示」から「企業価値の証明」へと軸足が移りつつある、ということです。

比較可能な指標だけを並べる時代は、もう終わりつつあるのです。

人的資本は「個人の持ちもの」である

人的資本経営を考えるうえで、私が最も重要だと思っているのは、「人的資本は個人の持ちものである」という認識です。

社員のスキルや能力は「会社の持ちもの」ではありません。あくまで「個人のもの」であり、会社はそれを借りている立場にあります。

だから本来、企業は「どう管理するか」ではなく、「どう借り、どう伸ばし、どう価値に変えるか」を考えるべきなのです。

この発想に立てば、賃上げの意味も変わります。会社の都合で仕方なく払うものではなく、個人の力をより大きく引き出すための条件整備になるからです。

春闘では、賃上げ率がニュースになりがちですが、問われているのは金額そのものだけではありません。

賃上げを「コスト」と見るか、「投資」と見るか。この違いが、人材戦略の違いを生み、開示の質の違いを生み、やがて企業価値の差になります

人材を「消費する会社」は、賃上げをしても苦しくなりやすい。

人材を「投資する会社」は、賃上げを通じて強くなれる。

だから今、企業が向き合うべきなのは「何%上げるか」だけではありません。「人をどう見るか」という、もっと根本の問いなのです。

田中 弦 Unipos株式会社代表取締役会長

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たなか・ゆづる / Yuzuru Tanaka

Unipos株式会社代表取締役会長。
1976年生まれ、北海道出身。1999年ソフトバンクのインターネット部門採用第1期生としてインターネット産業黎明期を経験。その後ネットイヤーグループ、コーポレイトディレクションを経て、2005年ネットエイジグループ(現ユナイテッド)執行役員。
現在は、国内外5000社以上の人的資本開示を読み込んだ「人的資本経営専門家」としても活動。
Unipos株式会社の前身であるFringe81株式会社(2017年東証マザーズ上場)の創業者であり、上場企業経営者として自社の人的資本経営に取り組んでいる。経営者としての実体験や、多数のクライアント事例、膨大な開示事例から導き出した、経営戦略と人事戦略を紐づけるための「人的資本経営フレームワーク(田中弦モデル)」を考案。
「10年後に日本は変わった、とみんなで乾杯しましょう」を合言葉に、精力的に日本企業の変革を推進する。
著書に『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』(ダイヤモンド社)がある。

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