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「遺伝はタブーではなく事実」最新のDNA研究が突きつける"能力差の現実"

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  • 安藤 寿康 行動遺伝学者・慶應義塾大学名誉教授

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(写真:Voice/PIXTA)
「能力は努力で変わるのか、それとも遺伝か?」この問いは、長く社会のタブーだった。遺伝を語れば「遺伝決定論」「優生思想」と批判されかねず、正面から語ることを避けられてきた。しかし、ゲノム解析技術の進歩によって状況は変わりつつある。行動遺伝学の研究は、知能、性格、学業達成、精神疾患など、人間の特性の個人差に遺伝の影響があることを膨大なデータで示してきた。これは「努力は無意味」という話なのだろうか? 行動遺伝学の権威ロバート・プロミンの新著『こころは遺伝する』を手がかりに、最新科学の現在地を、安藤寿康(行動遺伝学者・慶應義塾大学名誉教授)が読み解く。
※本記事は『こころは遺伝する』収録の「解説」を引用しています。

遺伝はタブーではなく、事実である

長いあいだ、行動遺伝学は知識人社会の中で微妙な立場に置かれてきた。「遺伝決定論」「現代の優生学」のレッテルを貼られるぞと脅され、正面から議論されるよりも、距離を置かれることのほうが多かった。

不思議なのは、批判の多くが「遺伝だけではない」「遺伝を強調すると差別につながる」と警告するだけで、では遺伝とは何か、遺伝の影響をふまえて人間と社会の問題が新たにどのように解き明かされるのかを真正面から問おうとしなかったことである。まるで遺伝という概念そのものが危険物で無視すべきものであるかのように扱われてきた。

その背景には、行動遺伝学の祖とされるフランシス・ゴールトンが優生思想を提唱し、その思想が歴史の中で悲劇的に利用され、こんにちでも欧米で特に知能の人種問題をめぐって泥沼の論争を繰り返してきたという事実がある。だからこそ、遺伝を語ること自体を避ける空気が生まれたのだろう。

しかし、科学はこの10年で決定的に進んだ。

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【DNA革命がもたらした転換】

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