天才ピアニスト・ブーニンが日本を愛する理由は「芥川龍之介」が原点にあった
たとえば『マズルカ』は2025-2026ツアーで弾いていますが、非常に難しいです。それは、演奏家によって、意味合いが変わるからなんですね。美しく聞こえることもあれば、悲しかったり、メランコリックだったり。攻撃的だったり、愚かだったり、表面的に終わってしまったり、いろんな聞こえ方をする作品です。
曲そのものがカメレオンみたいですし、ほかにも、お客さんのその場の空気に合わせて、空気を取り込みながら、演奏する側がテンポを選んだりすることもあります。そういう曲ですから、とても興味深いけれど、一方でめちゃくちゃ難しい。
出演1秒前まで曲に取り組んでいる
――マズルカ以外の曲で2025年のツアーはどんな理由で選曲しましたか。
ブーニン:私が記憶している限り、若い時から今日に至るまで自分が取り上げる作品、コンサートで演奏する作品というのはすべて自分自身が愛している作品です。それをお客さんに届けたい。自分にとって訴えるものがあまりない曲とか、自分自身があまり理解できない作品を取り上げるようなリスクは冒しません。自分自身が何かしらを感じる作品ばかりを選んでいます。
具体的には、自分が実際に家で弾いてみて、弾けると思った曲を選んでいます。中には弾けなかった曲もあるんですよ。きちんと弾けないから、コンサートで取り上げられないと諦めた曲もある。今回のツアーで選んだ曲も、ショパンの思いにふさわしい、高いレベルで弾ける曲ばかりを選んでいます。もちろんすべて完璧というわけではないかもしれない。ですが、舞台に出る最後の1秒までそれらの曲に取り組んでいきます。
――今回、ショパンの若い時から晩年にかけての幅広い楽曲を選んでプログラムを組んでいるのはなぜですか?
ブーニン:ショパンのポーランドで出版された楽譜を見ていたら、ちょくちょくショパンの「書簡」、手紙からの引用が記されているんですね。たとえばある作品が誰かに献呈されていたら、その人に宛てた書簡の一部が載ってたりするんですが、その中に「昨日コンサートでマズルカを弾いた」みたいなことが書いてあるんですよ。彼は作曲家であると同時に演奏家でもありましたから。


















