職場いじめで幻聴が…追い詰めた上司の言葉とは 「お母さんは悪い人と入れ替わった」と打ち明ける娘を救った"母の愛"
誰もかばってくれません。「わたしが、仕事ができないから悪いのかな」と思いながらも、どうすればよいのかわからない。
昼休みの時間になっても、弁当の味がしなくなっていったそうです。
やがて、春香さんは眠れなくなっていきます。さらに、胃痛や吐き気、動悸を日常的に感じるようになります。通勤電車では胸がキリキリと締めつけられ、会社の最寄り駅が近づくほど不安が湧き上がってきます。駅のホームに立つと、足が重く、一歩踏み出すのに力が要るような状態になるまで、追い詰められていたのです。当然、仕事に行くことなどできません。
母:それで春香は治るのでしょうか?
広岡:まずは、乱れている脳の働きをお薬で整えることから始めましょう。今日は、抗精神病薬という薬を3日分出しておきます。よく効くので、症状は少し落ち着いてくるはずです。服薬管理はしっかりお願いします。春香さんも忘れずに飲むようにしてくださいね。
母:はい。そうします。
春香:(小さな声で)わかりました。
広岡:薬の効果を確認したいので、2、3日後にまた来院できますか?
母:春香、大丈夫?
春香:3日後なら。
広岡:それでは3日後にお待ちしております。
春香さんは、お母さんに促されて椅子から立ち上がり、クリニックを後にしました。わたしは、ふらつきながら歩く春香さんの後ろ姿を見ながら、心の中で「大丈夫だから」と声をかけました。
服薬し、3日後に再来院した患者さんの変化
2人が再度来院したのは、約束通り3日後でした。
春香さんは、先日の診察室での姿とはがらりと変わって表情が明るくなっています。
広岡:お薬はどうでしたか?
春香:(お母さんが話そうとするのをさえぎって)頭の中がすっきりしてきました。
広岡:よかったです。まだ誰かの声が聞こえてきますか?
春香:かなり聞こえなくなってきました。
広岡:頭の中が少しずつ落ち着いてきているようですね。お母さんが別人だという恐怖はまだありますか?
春香:(お母さんの顔をちらっと見てから)本当は怖いです。でも怖くないときもあります。お母さんに頼っています。……よくわかりません。
1週間後の春香さんは、さらに落ち着いた表情をしていました。
広岡:ずいぶん状態が良さそうですね?
春香:昨夜から声は聞こえなくなりました。ただ……。
広岡:ただ、どうされましたか?
春香:(少し暗い表情で)声は聞こえなくなりましたが、いまも誰かから覗かれていると感じるときがあります。ひとりで寝ていると、誰かに殺される気がして……。
薬を飲み始めて1週間ですから、まだ、脳が回復しきれていないのでしょう。もうしばらくすると、その幻覚もなくなります。
それから数週間後、薬の効果で徐々に脳の状態が整ってきた春香さんから、うれしい報告がありました。





















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