教員志望の学生「知識がなさすぎる」、探究重視で知識を軽視…"大学の教職課程"への強烈な危機感

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では、なぜ教員を目指す学生たちの知識量が低下しているのか。そこには、今の学校教育のあり方や、教職課程の方針転換といった課題があると長野さんは指摘する。

「1つは、総合型選抜の拡大によって、いわゆる受験勉強をしてこなかった学生が増えたことが考えられます。総合型選抜で入って来た学生は、中高の授業で学んだことも覚えておらず、知識が少ないのです。

ただ、一般入試で入ってきた学生が模擬授業をやった時も、受験勉強で頭に入れた用語を連ねるだけ。作品の背景や事象の奥にあるものを考えることができておらず、授業が成立しない学生もいました」

さらに「受験勉強なんて社会に出たら役に立たない」「知識や情報はAIに聞けばいい」という知識軽視の風潮は大学教育にも見られると話す。

「近年、学校教育では探究学習が重視されるようになり、教員養成でも『教員は知識を教えなくていい。とにかく子どもに話をさせろ』という流れになっています。しかし、こうした方法論を重要視する大学教員は、実際に学校現場で中高生に教えた経験がないのでは。

学校現場で教えていれば、基本的な知識が入っていない子どもたちに話をさせるだけでは何も生まれないことがわかりますから。探究学習のようなアクティブ・ラーニングは、ある程度知識を積み重ねたうえで行うものなのです」

それでも、大学の教員養成ではアクティブ・ラーニングや指導案の書き方といった方法論が重視されている。「だから、学生たちは自分の知識不足を自覚できない」と長野さんはため息をつく。

その状況を打開すべく、学生たちにアクティブ・ラーニングではなく、知識教授型の模擬授業を体験させたり、本を読むことを促したりしているという。

「『教員を目指すなら教科の知識も一般的な知識も、もっと身につけたほうがいい』と学生に言っても、『そんなこと、これまで言われたことがない』と苦笑いされるばかりです」

知識量があれば授業準備はそれほどかからない

では、知識量が足りないまま教員になった場合、どんなことが起こりうるのか。

「いい授業をするためには知識が必要です。決まった台本を読むような授業はつまらないですし、授業の下手な教員は生徒に舐められます。それで自信をなくしたり、『生徒が言うことを聞かない』と嘆くのは違うのではないでしょうか。

僕は学生時代に年配の先生から『大事なのは知識。いろいろなことを知らないと、話すことは出てこない。だから知識を積み上げて』と言われたのですが、その通りだと実感しています」

自分の頭の中の引き出しに知識がたくさん入っていれば、生徒が興味を示す話題を提供し、さまざまな切り口で説明することができる。だからこそ、教員にはある程度の知識量が必要だと長野さんは強調する。

「最近はよく、『教員はブラックだ』とか『授業がうまくいかない』『週末も授業準備で潰れる』という教員の声が取り上げられますよね。しかし、自分の教科の専門知識や、その教科にひも付く一般的な知識がしっかり頭に入っていれば、『授業準備の時間がいくらあっても足りない』という事態にはなりません。実際、僕も自分の専門分野なら事前準備なしでいくらでも生徒に話せますから」

次ページ中教審でも教職課程の見直しが進められている…
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