GX-ETSの第2フェーズ。制度の根幹である、排出枠の割当方法、ベンチマーキングの留意点をエネルギー政策の専門家が解説(後編)
排出量のうち、ベンチマークの算定範囲に含まれる割合は、業種によって異なる。例えば、石油精製や高炉製鉄などの素材系産業では、ほぼ全排出量をベンチマークでカバーするが、自動車のカバー率は4割と低い。その理由は、自動車は車種ごとに部品の内製率が異なり、排出原単位に有意な差が生じるためである。
このため、直接排出の大きな割合を占め、かつ車格による原単位のばらつきが比較的小さい乗用車のボディの塗装工程に限定してベンチマークを策定したことから、カバー率が4割にとどまった。なお、残りの6割分に対してはグランドファザリング方式で割当を行う。
「公平な評価」の考え方
企業の原単位の公平な比較方法に唯一の正解はないが、GX-ETSでは、企業の削減努力と関係しない要素によって生じる原単位の差を補正することで公平性を担保した。その補正項目には主に以下の2つがある。
1つ目は品種や製品構成に起因する原単位の差の補正である。原単位の低い製品を多く生産する企業の方が、補正前の原単位は低い。この指標に基づいて排出枠を配分すると、原単位の低い製品を多く生産する企業には余剰枠が、原単位の高い製品を多く生産する企業には枠不足が生じる。このため、業界標準の製品構成となるよう補正した指標で各社を比較し、割当時には各社の製品構成を踏まえた調整を行う。
例えば紙製品の場合、標準的な紙製品の原単位を1とすると、包装用紙の原単位は0.71、衛生用紙では1.52と、2倍以上の差がある。このため、それぞれの生産量にこの数値をかけて活動量を補正した原単位を用いて各社比較を行い、割当量の算定でも同様の調整を行う。
2つ目は投入するエネルギーや中間製品の内製率の違いに起因する原単位の差の補正である。エネルギーや中間財の生産時の排出は、GX-ETSでは直接排出者である生産企業が規制対象となる。一方、電力購入などの形でそれらを外部調達した場合、調達したエネルギー等の使用に伴う排出は間接排出に相当するため、排出枠の取得義務はない。つまり、直接排出だけを評価すると、エネルギーを外部調達する企業の原単位が有意に低くなるため、この基準に基づく割当量配分では、自家発電によって電力を内製している企業は排出枠が足りなくなる。
このため、内製率の違いによって企業間で一定の差異が生じている場合には、間接排出を含めた原単位指標で各社を比較してベンチマークを決定したうえで、割当時には直接排出の部分だけを割当対象とする措置をとる(図2)。

これらの「公平な評価」は、GX-ETSで採用された1つの考え方にすぎず、まったく異なる考え方も存在する。例えば欧州連合(EU)では、技術中立的なベンチマークが志向されている。





















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