なぜトランプ大統領を議会は罷免できないのか、民主的な憲法が独裁者を生み出すという盲点、民主制が持つ大きな欠陥が今、世界を覆っている

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確かに、緊急事態において国民がなんらかの決定を下すことは不可能である。例えば敵が侵攻した場合、それについて議会で議論するというのでは手遅れになる。緊急時の議会決定は事後的にならざるをえない。では誰がそれを決定するのか。それは執行権をつかさどる大統領あるいは首相である。

シュミットはこう述べている。

「憲法はせいぜい、緊急事態において誰が行為するのを許されるかを挙げられるのみである。この行為がいかなる統制にも服していないならば、つまり法治国家的憲法の実務におけるように、この行為が相互に阻止し均衡しあう様々な機関に何らかの仕方で配分されていないならば、だれが主権者なのかは即座に明らかになる。主権者が、極端な緊急事態は存在するのかについても決定し、緊急事態を除去するため、何をすべきかについても決定する。主権者は、通常の現行法秩序外部に立ちながら、現行法秩序の内部に属する。というのも、彼には、憲法を全体として停止できるか否かを決定する権限があるからだ」(13ページ)

緊急時には神のようになる指導者

これはある種、神学的議論である。神はわれわれ人間世界の外にいて、外からわれわれを規制する。中世において流布した「王権神授説」なるものは、国王が神の命を受け、外からわれわれを縛ることを意味していた。

しかし今や、国王はいくつかの国で存在するものの、ほとんどが国民主権の民主社会である。われわれと同じ普通の人間が大統領に選出されるのだ。だからその意味で、大統領はわれわれの仲間の一人である。しかし、緊急時にはその大統領は仲間ではなくなり、神のような存在に変貌し、われわれを無視しえるのである。

仮に大統領が通常人とは違う、無法者であったらどうであろう。彼は、自らを守るために緊急事態を自前で用意し、憲法制度を無視することができることになる。

なるほど、ベネズエラのマドゥロ大統領を拉致し、関税を示威的に引き上げ、議会や裁判所に高圧的な態度で接する大統領は尋常な人物とはいえない。しかし、問題はそこにはない。彼の人格が問題ではないのだ。むしろ完璧に見える民主憲法の持つ主権には、大きな盲点があるということが問題なのだ。

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