なぜトランプ大統領を議会は罷免できないのか、民主的な憲法が独裁者を生み出すという盲点、民主制が持つ大きな欠陥が今、世界を覆っている

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ところが、トランプ大統領が2025年に始めた関税政策は、これらの憲法に違反しているにもかかわらず遂行され、依然継続しているようにも見える。またベネズエラへの電撃作戦は対外戦争とも思われるが、議会でいまだ議決を受けていない。対日戦争でさえしっかりと議会で議決されていたのだ。

憲法を見る限り、完璧である。アメリカ大統領は、以下のように憲法に従って処罰される規定ができているのだ。大統領の権限を扱う第2条4節には「大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪またはそのほかの重罪および軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合、その職を免ぜられる」(『世界憲法集』宮沢俊義偏、1983年、45ページ)とある。

なぜトランプ大統領を議会は罷免できないのか

すでに前回の大統領時代において2度の議会の弾劾決議を受けているトランプ大統領には、首の皮一枚で決定を免れたという苦い過去がある。今回はこれで3回目である。

しかも、「エプスタイン問題」というスキャンダラスな問題もある。現代版セレブがつくったハーレムは、アメリカのみならず世界に衝撃を与えている。トランプはエプスタインの友人なのだ。しかし、このように違法行為だらけであるにもかかわらず、トランプ大統領を罷免することは困難を極めている。それはなぜか。

1922年、ドイツの政治学者カール・シュミットは『政治的神学』(権左武志訳、岩波文庫、2024年)の中でこの問題を鋭く指摘している。冒頭にこうある。

「主権者とは、例外状態に対し決定する者である」(11ページ)

これはまさに憲法にとって大きな逆説である。憲法では主権者は国民であると規定されているのに、戦争などの危機的状況である例外状態においては、主権は国民ではなく、決定を下す大統領あるいは首相であるというのだ。

次ページ民主主義の機能不全
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事