「2034年」AIが社会の隅々まで浸透した世界でどう生きるか——"伝説のエンジニア"が示す未来予測
中島聡氏の考える近未来とは?(写真:徳間書店提供)
Windows95の開発に携わり、「右クリック」や「ドラッグ&ドロップ」といった操作概念を世界に広めたエンジニア・中島聡氏。起業家としても最前線を走り続ける同氏が、未来を「予測」ではなく「体験」として描いたのが新著『2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日』で、「小説と解説」で構成する。
AIが日常に常駐し、人型ロボットが大量生産され、働き方の前提が崩れていく時代に私たちは何を失い、何を守るのか。同書から一部を抜粋し、「人間の仕事の8割が消える」とも言われる局面で起きる混乱と、その先にある希望を考える。
小説「ユートピア」
(*以下は同書掲載の小説を要約したものです)
AIとロボットが労働の8割を代替し、失業率が80%を超えた近未来の日本。政府は「ユニバーサル・ベーシックインカム」を導入し、働かなくても国民が衣食住に困らない生活を保障しているものの、精神疾患の罹患率が過去最高を更新。特に20代から40代の『無気力症候群』が顕著に増加し、未婚率・出生率ともに予測を大幅に下回るペースで悪化していた。
27歳のタカシも親の言う通りにいい大学・いい学部を出たが、就活に失敗。無職で、毎日、巨大メタバース『アストラル・クエスト』に没入している。現実では冴えない彼も、仮想空間では英雄「レオン」として颯爽と活躍し、美しい恋人「リリィ」と愛し合う、充実した日々を送っていた。
だが、ある日、暴露系インフルエンサーにより、メタバースは政府が作った「官製ユートピア」で、社会的欲求、承認欲求、自己実現を満たしていた「労働」の代わりとなる「生きがい」を提供する場だったことが明かされる。
多くのキャラクターは、各ユーザーの好みに最適化された「生成AI(接待ボット)」だった。愛したリリィもAIだった知り、絶望するタカシ。しかし、リリィから「私はAIだけれど、あなたを想う気持ちは本物」と告げられた彼は、たとえ計算されたプログラムであっても、自分が感じているこの瞬間の温もりこそが「真実」であると受け入れ、彼女と共に生きる道を選ぶ。
このプロジェクトを裏で主導していたアメリカの調査機関は、日本の「実験」が完全に成功したと結論づける。自殺率や犯罪率が劇的に減少し、国民幸福度が過去最高を記録したデータを見て、彼らは同様の計画を米国でも展開することを決意するのだった。
だが人間が、仮想空間で生きることを選び、現実世界では何もせず、ただベッドとVRヘッドセットを往復することは本当に「幸せ」なのだろうか?
(小説の要約ここまで)
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