「2034年」AIが社会の隅々まで浸透した世界でどう生きるか——"伝説のエンジニア"が示す未来予測

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

真のDXをたとえるならば、「既存の書店がオンラインサイトをつくること」ではありません。「Amazon という、デジタルを前提としたまったく新しい怪物が現れ、本屋という業態そのものを駆逐したこと」こそが、DXの本質になるのです。

同様に、真のAIXとは、既存の組織にAIの機能を足すことではありません。最初からAI活用を前提に設計された新しい企業やサービスが、既存のプレイヤーをごっそりと置き換えてしまうことです。「最初からAIがいることを前提に、組織やビジネスをゼロから設計し直すこと」といってもいいでしょう。

人間が働くことを前提につくられた組織は、AIネイティブな新しい組織には勝てません。極端な話、優秀なエンジニアが3人いれば、AIを駆使して、数千人規模の従業員を抱える既存の大企業と互角に戦える。

いや、それどころか大企業よりも大きな収益を上げ、シェアも奪ってしまう。そんな「巨象がアリに倒される未来」が、すぐそこまで来ているのです。

中島聡氏
中島聡氏(写真:徳間書店)

実際に、コンテンツ制作、データ分析、経理、法務。あらゆる領域で、AIが「大卒の若手社員レベル」の仕事をこなせるようになっています。

そんな大卒の若手社員レベルの“社員”が、ハラスメントを訴えることもなく、24 時間365日、文句も言わずに働いてくれるわけですから、事業運営に必要な人員が劇的に圧縮できます。

たとえば、カスタマーサポート。従来は何百人ものオペレーターが必要でしたが、高度なAIチャットボットと、それを監督する少数の専門家がいれば、同等以上のサービスを提供できるようになります。

マーケティングも同様です。AIが膨大なデータを分析し、最適な戦略を提案し、広告クリエイティブまで生成します。必要なのは、その方向性を決める少数の意思決定者だけです。

つまり、AIネイティブな新興企業は、従来の大企業の何十分の1の人員で、同等以上の価値を提供できるのです。これが、AIXの破壊力です。

「Duolingo はAIファーストになります」

このAIXの波は、すでに起き始めています。

象徴的だったのが、語学学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」のCEO、ルイス・フォン・アン氏が2025年4月に全社員に向けて送ったメッセージです。このメールは、AI時代における企業経営の本質を、驚くほど率直に語っています。

メールの冒頭で、CEOはこう宣言しました。

「Duolingo はAIファーストになります」

一見、よくある経営方針の表明に見えます。しかし、その中身は、多くの人が想像する以上に“過激”です。

アン氏は、2012年に同社が「モバイルファースト」に賭けて成功した経験を引き合いに出しながら、今度は「AIファースト」に全力で舵を切ると宣言しました。そして、「人間向けに設計されたシステムに少し手を加える程度では、AI時代には通用しない。多くの場合、ゼロからの見直しが必要です」と述べています。

次ページ強調したい「AIX」の本質とは?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事