東洋経済オンラインとは
キャリア・教育 #逆境からの人々

「歩道橋から飛び降りて、顔がぐちゃぐちゃになっても愛してくれた」 《25歳差、唯一愛した人》との別れが、"楽しかった"と言えるワケ

10分で読める
  • 肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

1人になった卯月さんの部屋には、ボビーさんの遺影と遺骨が置かれている。遺影は、メジャーリーグの優勝決定シリーズ第4戦で、大谷翔平が3本目のホームランを放った瞬間の、ボビーさんのうれしそうな笑顔だ。

実は、大谷がホームランを打つ予感がしており、卯月さんは狙って撮影したのだそう。「うまく撮れたので、遺影はこれにしよう、ってお父さんと決めてあったんです」と卯月さんは笑顔で話す。

遺影にもなった、大谷翔平選手のホームランを見つめるボビーさんの写真(写真:卯月妙子さん提供)

肉体はなくなっても、ずっとここにいる

ボビーさんが使用していた介護器具は、業者が回収していったが、車椅子だけは残してほしいと卯月さんが懇願すると、特別に許可が下りて買い取ることができた。思わず涙がこぼれたという。

いつもボビーさんが座っていた車椅子。そこにあるだけでボビーさんの存在を感じる(写真:卯月妙子さん提供)

卯月さんは毎朝、車椅子に座り、ボビーさんの遺影に「おはよう」とあいさつし、タバコを供える。夜は「お父さん、寝るべ」と、遺影を枕元に置いて眠る。

「遺影のお父さんは、笑ったり悲しんだり、いろいろな表情に見えるんです。しょっちゅうなでたり、キスをしたりしていますね。肉体がなくなってしまった寂しさはすさまじいですが、車椅子も残してもらえて、ずっとここにお父さんがいるんだ、と思っています」

卯月さんはこれからも、ボビーさんとの思い出が詰まった今の部屋に住み続けるという。来年夏頃には、生前のボビーさんの希望で、海上での散骨が予定されている。

死はいつか必ずやって来る。自分自身の死も、愛する人の死も。私たちは、そのことをときに忘れ、ときに思い出す。四六時中、死に向き合うことなどできない。

だからこそ、思い出したそのときは、「どう生きたいか?」「誰と生きたいか?」「どんな最期を迎えたいか?」など、真剣に考えてみるのもいいかもしれない。終わってしまう命もあるが、続いていく命もあるのだから。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

キャリア・教育

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象