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「歩道橋から飛び降りて、顔がぐちゃぐちゃになっても愛してくれた」 《25歳差、唯一愛した人》との別れが、"楽しかった"と言えるワケ

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  • 肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト
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幸いにも卯月さんは順調に回復し、約5カ月後に退院。その間、ボビーさんはほぼ毎日のように見舞いに訪れた。事故の影響で片目は失明し、歯は入れ歯に。美しかった顔は大きく変わってしまったが、ボビーさんは変わらず愛し続けてくれたという。

「鏡で見ると、妖怪にしか見えない顔なんですけど、お父さんは全然気にしないで、お見舞いに来ると必ずキスしてくれたんです。一生忘れない、最大の愛情です。だから私は顔がぐちゃぐちゃでも、スーパーにも美容院にも行けたし、絶望することがなかった。日々を笑って過ごせるようになりました」

ボビーさんが撮ってくれた卯月さんの写真(写真:卯月妙子さん提供)

2人が籍を入れたのは16年。1升瓶を軽く空けていたボビーさんが、8合で酔っぱらうようになり、卯月さんが「老後の世話がしたい。私に看取らせてくれ」と伝えたのだった。ボビーさんも快諾。2人は、ボビーさんの故郷である北海道の函館に移住した。

ボビーさんは重度の基礎疾患があり、卯月さんの統合失調症も思わしくない。医療と福祉のサポートを受けながらつつましく暮らしていたが、それでも穏やかに流れる時間を、心から幸せだと感じていたという。

特に好きなのは、一緒にテレビを見ている時間だと卯月さん。好きな番組はメジャーリーグと将棋、時代劇や映画。大谷翔平やダルビッシュ有が先発の試合や、藤井聡太と羽生善治の対局の際は、2人でテレビにかじりついたのだそう。

「延命はしない」と決めていた

2人で話し合い、ボビーさんに万が一があったとき、延命はしないことにしていた。入るお墓や、葬儀や戒名はなしにすることなど、すでに決めていたという。

さらに、こんな約束もしていたと卯月さんは明かす。

「お父さんが先に死んだら、三途の川で私を待っててくれ、って言いました。私がいつか行ったら、一緒に船に乗って酒盛りをして、地獄でも鬼と飲みまくろうねと。そして来世でも出会って、また結婚しようねって約束しているんです」

結婚してからも強く惹かれ合っていた2人(写真:卯月妙子さん提供)

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【ボビーさんが自分にとって最後の男性】

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