「なんちゃって探究」「やらされ探究」…"非本質的な探究学習"で大学の先生たちが悲鳴を上げている《大学、行政、中学・高校が協力して解決を》

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東京大学大学院情報学環准教授の開沼博氏は福島県出身で、2022年より中高生を対象とした「福島学カレッジ」を開催し、「研究型探究」プログラムを実施している。大学や省庁と連携し、すでに中高生の学会発表は30を超え、環境大臣賞をはじめとする各種コンペティションで成果が出ている。

開沼博 東京大学大学院情報学環准教授
開沼博(かいぬま ひろし)東京大学大学院情報学環准教授(写真:本人提供)

開沼氏は、10年ほど前、スーパーサイエンスハイスクール指定校だった福島県立福島高校が放射線量計を国内外複数の高校に配布し、自然被曝量を測定した研究が後に国際専門誌に査読論文として掲載されたことに衝撃を受けた。

そこで、開沼研究室では、全国の中高や企業と連携し、10年以上にわたって探究学習、STEAM教育に関する実践型研究に取り組んできた。25年度より東京大学教養学部で演習「探究学習論」を開講し、学生・教育関係者との連携を拡大している。

中等教育界隈では「なんちゃって探究」「やらされ探究」という言葉がある。

開沼氏は現行の学習指導要領で「探究」概念の定義や達成目標、何がよくて何が悪いのかという事例・基準などがはっきりと明示されておらず、現場が「探究」という言葉の理解が不十分なまま勝手にその言葉に神聖性を投影したり、人によって違う内実をもった「探究」概念の吟味をせずになんとなく進めていることに強い違和感を感じている(次期学習指導要領の議論で目標やプロセス、質の整理が進められている)。

同様に「調べ学習を多少見栄えよくしたもの」「雑な大学っぽいこと」になりかねない中高生の探究のあり方に大きな懸念を示している。しかし、そこで門戸を閉ざすのではなく、むしろ新たな高大連携・高大接続の在り方、経済格差・体験格差・地域間格差などの是正の可能性も含めた、探究学習の可能性を、総合型選抜の拡大も含め、前向きに捉えている。

探究・STEAM学習に見られるような「主体的・対話的で深い学び」は、従来の教科別学習では引き出せない生徒の意欲や資質・能力が無限に拡大する可能性がある。

開沼氏も「福島学カレッジ」で、背中をそっと押すことで飛躍的に成長を遂げる中高生の姿をいくつも見てきた。まだまだ試行錯誤、過渡期の段階にあるこうした学びにおける現場の混乱がありつつも、研究型探究に生徒進路選択の公平性や自由を拡大し、その中で生徒の意欲や能力を引き出す可能性を見ている。

国は「教師の頑張りに依存しない」制度設計を

大阪大学大学院人間科学研究科准教授で教育法学が専門の髙橋哲氏も開沼氏と同様、文科省が「探究」の定義をはっきりとさせていないことに懸念を示している。

さらに、学習指導要領が本来法的拘束力をもたない教育内容の目安を示す大綱的基準であるにもかかわらず、時と場合によって、恣意的に事実上の法規のように運用している点を大きな問題と見ている。

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