日本社会で増殖する「他人に聞かない若者たち」、その先に生じる《新たな格差》がもたらす悲惨な末路
ある昼下がり、筆者が経験したしゃぶしゃぶ店での出来事が、現代の職場に潜む問題を明らかにした。
野菜コーナーで見慣れない葉物を見つけた筆者が、近くにいた若いアルバイトの従業員に「この野菜の名前は何ですか」と尋ねた。すると、彼は黙って立ち尽くし、考え込んでいた。わからないなら、ほかのスタッフに聞けば済む話なのだが、それもせず沈黙し続けた。
筆者はしばらく待ったが、彼は何も言わず、視線を落としたままだ。返答がないため、やむをえず別のスタッフに声をかけると、すぐに答えが返ってきた。筆者は礼を述べて席を後にしたが、若いアルバイトの反応が頭から離れなかった。
「聞くは一時の恥」が通用しなくなった時代
なぜ彼は、「わかりません」とも言わず、誰かに聞こうともしなかったのか。その沈黙は、現在の職場に広がる「人に聞かない」潜在心理を象徴している。
この背景にある大きな要因として、俗に「ググる」と呼ばれる検索エンジンの普及が考えられる。さらに最近では、リンクを開かずに答えが表示される「ゼロクリック検索」が普及し、従来の検索を上回る勢いで使われている。
「AIモードでさらに詳しく」というリンクをクリックすれば、調べたい内容についてAI(人工知能)が質問に対して、最適化された要約を会話形式で直接返す。その結果、人に聞かずに済む環境が定着したことで、人間関係を構築する機会を失っている。



















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