日本政治史に刻んだ新たな1ページ、初の女性首相を読み解くための5つの視点

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首相に選出された高市早苗氏(21日、衆院本会議)Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

自民党総裁就任直後に公明党が連立政権から離脱し、首相指名選挙へ多数派工作という試練に直面した高市早苗氏。日本維新の会との連立合意にこぎつけ、晴れて首相の座を手にした。

それでも少数与党であるがゆえに国会運営は難しいかじ取りを迫られる。喫緊の課題は物価高対策を含む補正予算の編成だ。来週以降、国際会議や想定されるトランプ米大統領との首脳会談など重要な外交日程も並んでおり、その手腕が早速問われる。

ここに高市首相を読み解く5つの視点を挙げた。

1. ガラスの天井

4日の自民党総裁選を制し、21日に首相に選出された高市氏は、女性のキャリアを妨げる「ガラスの天井」を突き破り、日本の政治史に新たな1ページを刻んだ。

女性が活躍できる社会を目指し、高市氏はこれまでに女性の健康に特化したナショナルセンター機能の構築や旧姓の通称使用拡大などの課題解決に取り組んできた。総裁選で掲げた政策には、ベビーシッターや家事支援サービスの利用代金の一部税額控除や、企業主導型の学童保育事業の創設を盛り込んだ。

一方、選択的夫婦別姓については、子どもの姓や仕事上の負担を巡る懸念から導入に反対するなど、ジェンダー平等を推進する立場とは一線を画す。こうした政治姿勢などを理由に、女性首相となっても「女性に優しい政治になるわけではない」との声も出ている。

2. 安倍路線

初めて挑戦した2021年の総裁選では安倍晋三元首相の支援を受けた。安倍氏が他界した後は後継者的存在として保守層の支持を集め、過去2回の総裁選では最も多くの党員票を獲得した。参政党の支持層とも重なっており、他党に流れた保守票を自民に引き戻すことができるかも期待されている。

保守的な国家観が強い高市氏は、閣僚在任中に靖国神社を参拝しており、中国や韓国との関係に与える影響が懸念されている。一方、総裁就任後は、秋の例大祭への参拝を見送るなど、現実的な対応を見せている。

3. 積極財政

「責任ある積極財政」を掲げる高市氏は、経済成長の実現へ必要なら赤字国債の発行も辞さない構えだ。

金融政策については「責任を持たなければいけないのは政府だ」とし、利上げで緩和度合いの調整を進める方針の日本銀行をけん制する。10月の共同通信の調査では、政策金利は「維持すべきだ」と回答。市場では日銀の利上げ時期が後ろ倒しになるとの見方が浮上した。

一方、高市氏が日銀の利上げに反対していると受け止められれば、物価高の一因である円安がさらに進み、自らの首を絞める結果にもなりかねない。日銀が国債買い入れを縮小させる中、財政が拡張傾向に傾けば長期金利の上昇を招く恐れもある。財政への信認を損なわない政策のかじ取りが求められる。

4. 少数与党

維新と連立合意に至ったものの、自民・維新両党の議席数は合計231と、予算案や法案の可決に必要な過半数に2議席不足している。高市首相は、維新との連立を基軸に他党の協力も得ながら、予算案など重要法案の成立を目指す方針だ。

臨時国会では、自民・維新の連立与党は物価高対策として電気・ガス料金の補助などの施策を講じ、即効性があるとして立憲民主、公明両党が求める給付は行わない方針。国民民主が求める「年収の壁」引き上げに対して高市氏は前向きな姿勢を見せるが、引き上げ幅や実施時期など詳細がまとまるかが今後の焦点だ。

5. 勉強家

熱心な勉強家として知られる高市氏は、維新が過去に発表した政策提言を全て頭に入れて連立協議に臨み、藤田文武共同代表を驚かせた。総裁選出直後のあいさつでは「全員に馬車馬のように働いていただく。自身もワークライフバランスという言葉を捨てる。働いて働いて働いて働いて、働いて、参ります」と意気込みを語った。

1961年3月7日生まれの64歳。奈良県出身。神戸大学経営学部卒業後、松下政経塾に入塾して政治の道を志す。ニュースキャスターを経て93年の衆院選に無所属で出馬し初当選。2006年に安倍政権で内閣府特命担当相として初入閣し、第2次安倍政権以降は総務相、自民党政調会長など要職を歴任した。

著者:照喜納明美

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