大学の年内学力入試、関東でも「今年も実施」の条件と各大学の配点など<動向まとめ> 学科試験計200点、小論文と調査書は各10点も

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つまり、年内学力入試は受験生の模試代わりのような側面があったと言える。たとえば年内に近畿大学の学校推薦入試を受けた場合、「合格したら2月の受験校は強気に選ぼう」「不合格だったら受験校を慎重に決めよう」とその後の戦略を立てることができる。もし年内入試がなくなれば、従来の受験戦略が通用しなくなるため、高校や塾・予備校も不安を抱えていたようだ。

※筆者が過去に取材した記事(https://www.moneypost.jp/1178326/3/)より

異なる評価軸と組み合わせれば、年内の学科試験は可能

ところが、だ。文部科学省は今年6月3日に公表した「令和8年度大学入学者選抜実施要項」(2026年春入学者)にて、これまで認めていなかった学力試験の年内実施について、“小論文や面接、実技検査といった評価方法と組み合わせる場合は可能”とする内容を新たに盛り込んだ。

「年内に行う総合型選抜や学校推薦型選抜で学科科目の試験をどう扱うかに関して混乱が生じていたため、今年の入試要項では明確にルールを示しました。小論文、面接などの、評価軸の異なる他の要素と組み合わせて多面的・総合的に評価をする入試の中に組み込むのであれば、学科試験も年内に行ってもよいということです」(文部科学省)

これに対して、一部報道では「文部科学省が方針を覆した」という記述もあるが、本当にそうなのだろうか。文部科学省は従来、「推薦入試においても“学力”を把握するべき」として「学力把握措置」を打ち出している。

2000年代、学生の獲得に苦戦するいくつかの大学において、「面接のみ」の総合型選抜で実質的には選抜をしてないという「ザル入試」が見受けられた。そこで文部科学省は「推薦入試でもしっかり学力を把握せよ」という方針を出していたのだ。なお、文部科学省の見解は「“学力”は様々な方法で測ることができる」というもので、小論文や面接での口頭試問、評定平均値などいろいろな方法のうちに、学科試験も含まれるというわけだ。

その流れで、学力を把握するための方法としては「大学入学共通テスト」の利用が推奨されているが、共通テストは1月に実施されるため、年内に合格を出したい大学にとっては活用しにくい。実際、大学側からは「共通テストを1カ月早く実施してほしい」という意見もあるほどだ。

ただ、この共通テストの前倒しで難しいのが、高校のカリキュラムとの兼ね合いだ。共通テストを年内に実施するとなれば、高校はそれまでにすべてのカリキュラムを終える必要がある。すると、授業の進度が速くなり、十分理解できないまま取り残される生徒が出る恐れがある。そのため、共通テストの時期を早めることは現実的ではない。

したがって、年内に合否を出したい私立大学は、条件どおりに面接や小論文などと組み合わせたうえで、あくまで多面的・総合的に学力を把握する1つの方法として学科科目の試験を課すことになるわけだ。

文部科学省の「年内入試では、小論文や面接と組み合わせるのであれば学力試験を課してもよい」という発表を受けて、2026年度の入試では複数の大学が、年内に学力試験を課す推薦入試を行う。

東洋大学は学科試験計200点、小論文と調査書は各10点

まずは東洋大学の動向だ。東洋大学は2026年入試でも、総合型選抜で基礎学力テスト型の入試を11月30日に行うと発表。昨年末に行った学力試験型の推薦入試では学力試験の点数のみで合否を決めたが、2026年度入試では、これに事前提出の小論文と調査書を組み合わせる。具体的には、国語と数学から1教科選択と、英語(必須)のペーパー試験、小論文、調査書からなる多角的評価で合否を決めるという。

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