「僕が子どもの頃、『遊☆戯☆王』とか、いろんなブームがありました。でも流行が終わると、みんな急にやらなくなるんですよね。『あれ、もう遊ばないんだ』って、ちょっと寂しかったんです。
そんななかでガンダムだけは違って、自分ひとりでも楽しめるし、大人でもずっとやってる人がいる。調べれば調べるほど知らなかった情報が出てきて、探究心がくすぐられます。だから『これならずっと遊べるじゃん』って思って」
個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」
高校時代、タカハシさんは“ガンダム好き”という自分の個性を、あえて前面に出すことにした。
「中学の頃は、ガンダムが好きって堂々と言うのがちょっと恥ずかしかったんです。その頃はまだ“オタク”って言葉にネガティブなニュアンスが強くて、アニメが好きってだけで引かれたり、からかわれたりすることもあって。
自分も、特別勉強ができるわけでも運動が得意なわけでもない何の特徴もない、普通の男子中学生でしたから、余計に自分からわざわざ“浮く要素”を出すのが怖かったんですよね」
でも、高校に進学したとき、気持ちがふっきれたそうだ。
「開き直りました。“ガンダムのやばいやつ”って思われたほうが早いなって。で、実際に言ってみたら、けっこうすぐにクラスで顔と名前を覚えてもらえたんですよ。“ガンダム好きのタカハシ”って、それだけで認識される。そこでようやく、自分が“誰か”になれた気がしたんです」
それは、彼にとって最初の「自分を名乗る」感覚だったのだろう。誰かと違っていてもいい。むしろ違うからこそ、覚えてもらえる。そんな経験は、彼の中でひとつの芯になっていく。
それからのタカハシさんは自信をもってガンダム愛を貫いていった。大学卒業後の就職先は某玩具メーカーで、ガンダムの商品紹介の動画にも出演していたそうだ。
「本当に楽しかったですね。大好きなガンダムについて、自分の言葉で伝える体験が病みつきになりました。学生時代、文化祭で映像制作をやったことはあったんですけど、プロの現場で毎週ライブ配信をやるって、全然違うんですよ。緊張もするし、準備も大変だけど、それ以上に楽しかったです」
その一方で、現実的な葛藤もあった。「この先、ガンダムに浸っているだけで大丈夫なのだろうか」と思うようになった。好きなことを仕事にできているという手応えがあるぶん、その先にある「生活の持続性」を考えるようになったのだ。
「仕事としては、本当にずっと続けたかったんです。でも、やっぱり生活っていう意味で言うと、現実的な不安があって。もしこれで数年後、何かあったとき、自分はどうやって食べていくんだろう……って。だから一回、普通の仕事をちゃんとやってみようと思いました」

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